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ホーム > お知らせ&日記(ブログ) > マンション管理士 業務日誌 > 大規模修繕工事の瑕疵保険について勉強会をしました。

2013年10月08日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

重松マンション管理士事務所では、事務所のスタッフを中心に定期的に勉強会を開催していますが、今回は大規模修繕工事の瑕疵保険について勉強会を開催しました。

大規模修繕工事で工事会社を決定するときの注意事項としては、いくつかありますが、

  1. 工事実績が豊富であること。
  2. 現場代理人(現場監督)がしっかりしていること。
  3. 工事の完成や、引き渡し後の保証に対して不安がないだけの十分な信用があること。

等ですが、その中でもとくに重要なのは「3」の会社の信用だと思います。
工事期間中に倒産してしまえば工事が完成しなくなりますし、工事完了後は、工事内容によっては最大で10年から15年の保証をしてもらわなければなりません。
ですから、財務内容がしっかりした会社(倒産しない会社)を選定することが大前提ではありますが、このような会社ばかりとは限りませんし、その選定基準もなかなか難しいものがあります。
また、管理組合の予算額の問題もあるので、分かっていても、信用力よりつい見積金額の方が優先される傾向にあります。
例えば、1社は帝国データーバンクの評点も高く、会社の内容は問題ないけれど金額は高い、もう1社の方は、金額は一番安く管理組合の予算内に収まっているが会社の内容に若干の不安がある。
このような場合は、どちらの会社に発注するべきか迷っていしまいます。
重松マンション管理士事務所では、大規模修繕工事のコンサルティング業務の一環として、工事会社を募集する際には、資本金や実績面だけでなく、売上や利益の推移、自己資本比率、経営事項審査結果通知書の内容、帝国データーバンクの評点なども調査し、最終発注段階では、必要であれば3期分の決算報告書を取り寄せて詳細な分析をして管理組合に報告します。
ですから、最初の応募段階から、ある程度のレベル以上の工事業者に絞り込んだうえで、見積依頼をすることになりますが、管理組合の事情(特に工事予算)によっては、基準を見直した上で、多少窓口を広げて(ハードルを低くして)募集することもあります。

工事の完成を担保する場合

工事の途中で倒産されたら大変なことになりますので絶対にこれだけは避けなければなりません。一般的に行われている方法としては、以下の手段があります。

工事請負契約に、工事完成保証会社を含めて契約する。

工事の完成を保証する「工事完成保証会社」を契約時に付ける方法があります。
これは、工事会社がもし工事中に倒産などして工事を継続することができなくなった場合に備え、元請会社と同等の規模や能力の同業者に、その後の工事の完成を保証してもらう契約方式です。
この契約をしておけば、元請業者が万が一工事期間中に倒産した場合は、完成保証会社がその後の工事を引き受けて完成させてくれます。
この方式は、管理組合に別途費用がかかりませんし、一見合理的に感じますが、同業者間の馴れ合いや、談合の温床になる可能性があり、得られる保証よりもデメリットの方が多い場合もあります。

工事完成保険を付保する

保険方式で、工事の完成を担保する方法があります。
この保険を引き受ける団体は複数あるようですが、私が調べた限りでは、設計事務所系の団体、金融機関と提携した団体、工事会社系の団体の3社でした。
契約金額に応じて保険料を払い、工事期間中に工事会社が倒産して工事が継続できなくなった場合や、前金を払ったのに倒産されて金銭的な被害が出た場合などに対応できる保険です。
具体的には、保険を引き受けた団体が認定した工事会社が残りの工事を継続して引き受けたり、実際に金銭的な損害が出た場合はその金額を補償するシステムとなっています。

工事後の瑕疵等への対応を担保する場合

大規模修繕工事では、主要な工事項目について契約上の保証期間があります。
例えば防水工事であれば、漏水に対して10年とか、塗装工事になら、塗膜の膨れやハガレ、変退色に対して5年等です。
工事の引渡し後に、保証の対象(いわゆる「瑕疵」)に該当する事態となった場合は、施工した会社が当然に補修工事等を実施してくれることになりますが、その時に会社が倒産してなくなっていたら補修してもらうことができません。
それを担保するのが大規模修繕工事瑕疵保険です。平成22年10月に、消費者保護のために国土交通省が認可した保険です。

大規模修繕工事瑕疵保険とは

この保険は、平成21年に施行された「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」により国土交通省が指定した保険会社が取り扱っています。
大規模修繕工事瑕疵保険を取り扱っている会社は4社ありますが、そのうち下記の大手2社が有名です。
ハウスプラス住宅保証株式会社
株式会社住宅あんしん保証

保険の対象となるマンションの部分

大規模修繕瑕疵保険の対象となる工事部位は以下のとおりです。
  • 構造耐力上主要な部分(主要構造部として、屋根、壁、柱、梁等)
  • 雨水の侵入を防止する部分(防水、シーリング等)
  • 給排水管路
  • 給排水設備
  • 電気設備
  • ガス設備
  • 防錆工事を行った手すり等の鉄部
その他特約として以下の項目を追加することも可能です。
  • 屋上防水工事の期間延長(5年を10年に)
  • タイル剥落特約(5年、10年)

大規模修繕瑕疵保険のシステム

  • 保険を引き受けるのは保険会社で契約者は工事会社となります。
  • 着工する前に、保険契約を締結します。
  • 保険料を保険会社に払い込むのは当然に工事会社ですが、最終的に保険料を負担するのは管理組合です。(保険会社から、管理組合には「保険加入証明書」が交付されます。)
  • 大規模修繕工事瑕疵保険の契約ができる工事会社はどこでも良いというわけではなく、保険会社の審査をクリアーして登録された工事会社でなければなりません。(保険会社のホームページ等で登録会社の検索ができます。)
  • 保険契約に際しては保険会社の検査員が現場検査を実施します。
  • 保険料は、保険会社によって算出基準が異なりますが、工事請負金額に対するパーセンテージで計算したり、大規模修繕工事を行うマンションの規模(床面積)と工事内容によって計算したりする方式です。
  • ちなみに、工事請負金額で算出した場合は、請負金額5千5百万円に対して、保険料は約23万円~28万円です。

保険が適用される場合

  • 引渡し後に瑕疵が発見されてその手直しが必要となった場合、補修工事に要する費用が保険金として、保険会社から工事会社に支払われます。
  • 引渡し後に瑕疵が発見されてその手直しが必要となったときに、施工した会社が既に倒産している場合は、補修工事に要する費用が保険金として、保険会社から管理組合に支払われます。
  • 保険金の対象は、補修工事に要する費用だけではなく、関連する専有部分の補修に要する費用や、居住者が生活できない期間のホテル代等も含まれます。

大規模修繕工事瑕疵保険のメリット

  • 工事会社が倒産していない場合でも、瑕疵があった場合は保険が適用されますので、工事会社が瑕疵を瑕疵と認めなかったり、瑕疵の修補を渋ったりすることがなくなります。
  • 保険契約に関しては、保険会社の検査員が図面や現地の施工状況を確認しますので、品質の高い工事が期待できます。

当日の様子

kasihokenn-01.jpgこの日の勉強会の出席は約10名
内輪での少人数の勉強会です。
kasihokenn-02.JPG実際の「保険加入証明書」です。
保険証券は、契約者である工事会社に対して発行されます。
大規模修繕工事のほとんどは、建築基準法の適用を受けないので、その品質についてどのように担保するのかが問題となりますが、保険会社の検査員の検査が入りますので、その意味では一定の品質が担保されるともいえます。

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