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2016年12月26日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

こんにちは。重松マンション管理士事務所所長の重松です。
過去に、「マンション大規模修繕工事における談合の実態について」という記事を書かせていただきましたが、今回はその第2弾です。
当事務所の顧問契約先に定期的にお送りしているニュースレターを一部アレンジしてこのブログでご紹介させていただきます。

実は、「大規模修繕工事の談合」については、過去に、管理組合の方を対象としたセミナーでテーマとして取り上げようと試みたことはあったのですが、内容があまりにもリアルで生々しいので、主催者側から「やめてください。」といわれ、いまだ実現していません。

しかし、業界では相も変わらずマンションの大規模修繕工事において談合が繰り返され、被害を受けている管理組合が後を絶たないので、思い切っていろいろと書かせていただこうと思いました。
今回は、貴重?なお話しをさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

1.談合とは

下の表をご覧ください。これは私が過去にコンサルティングを行った大規模修繕工事における工事業者の見積金額一覧表です。
上の段が設計価格と各社の提出金額(単位は万円)、下の段は設計価格に対する各社の工事金額のパーセンテージです。

 設計価格A社B社C社D社E社F社G社H社
工事費21,52517,90018,06018,90019,20019,40019,55019,60021,700
10083.283.987.889.290.190.891.1100.8

どうでしょうか?
設計金額に対し、最安値は83.2%で、そこから少しずつ価格を上げ、最高値は100.8%となっています。いわゆる「横並び」という状況です。
8社の工事業者が各社の意思に基づいて見積りをしたら、金額がこのように一定の範囲にきちんとおさまることはまずありません。なぜなら、見積りを提出する時点の会社の事情が様々だからです。

  • 今期は、売り上げも少ないので多少無理をしてでもこの工事を受注したい。
  • マンションの規模も手ごろで、場所も会社の近くなのでぜひ受注したい。
  • 受注したくて応募したけれど、先に別の案件が受注できたので、予定していた現場代理人が足りなくなった。
  • 他の同業者から「この案件は、わが社が受注することになっているので降りてくれ」と言われたから今回は無理をせず「貸し」を作っておこう。

以上のような理由で、「横並び」はあり得ません。ではどうしてこうなったのでしょうか?
それは、A社からH社までが設計価格を知ったうえで、全社で話し合い、見積金額を決めて提出したからです。つまり設計価格も漏えいしていたということです。

このとき、私は、公正な競争が行われていないと判断したので、管理組合にA社からH社まで全社を失格にしたうえで、同じ仕様と条件で別の会社から見積りを取得することを提案しました。
結果は何とA社の金額より約3000万円安い見積りが出てきました。管理組合はびっくりしましたが、実際はその金額が適正な金額だったということです。

マンション管理組合にとって、大規模修繕工事は十数年に一度の周期で訪れる大事業です。
検討から工事完了までに1年以上の月日を費やすほかに、多額の工事費用を支出して実施します。管理組合は、自分たちがコツコツとためた修繕積立金を無駄なく有効に使って良い工事をしてもらおうと考え、設計事務所や工事業者を信頼して業務をお願いします。
しかし、その期待を裏切ってこのような談合を行い、何千万(マンションの規模によっては何億)というお金を不当に巻き上げ、設計事務所にキックバックをしたり、談合に参加した業者たちで山分けをしたりするのです。

談合は、日本の建設業界特有のことだと昔からいわれてきましたが、最近は大手のゼネコンを中心に「脱談合」宣言をするようになってきました。しかし、実際は脱談合宣言が業界全体に行きわたっているわけでもなく、マンションの大規模修繕工事を専門とする業者間においては、全く改善は見られず、多くの管理組合が被害にあっている状況です。そしてもっとひどいのは、管理組合の多くは、自分たちが被害にあったことを分かっていないことです。
これが、大規模修繕工事における談合の実態です。

2.なぜ談合が起こるのか

では、なぜ談合が起こるかを考えてみましょう。そこには、管理組合側の問題点もあるようです。

管理組合特有の組織と運営方法

談合が起こりやすい理由の一つに、管理組合の組織と運営方法があります。下の表をご覧ください。管理組合と民間の会社の一般的な比較をしてみました。

 管理組合民間の会社
①構成員管理組合員株主
②最高意思決定機関管理組合総会株主総会
③業務執行・基本意思決定理事会取締役会
④役員選出方法等輪番制・義務的・任期1年特定の人物・複数年任期
⑤役員の能力ほとんどが素人プロの集団で実力者揃い
⑥責任体制不明確明確(刑事罰あり)
⑦報酬無報酬高額報酬

組織の形態を見ると、①から③まではよく似ています。しかし、運営に関する④から⑦までは全く異なります。
つまり、良いか悪いかは別にして、多くの管理組合の運営は、①輪番制(順番)で選ばれた役員が、②いやいやながら苦手なことを、③責任体制が不明確なまま、④無報酬でやらされている、ということです。

ですから大規模修繕工事のような大きな事業を担当することになった理事や専門委員は、①なるべく面倒なことはやらず、②責任がこの身に降りかからないように発言し、③組合員からも文句をいわれないように行動して、④早く終わらせて辞めたい、が本音です。その結果、次のようなことを考えます。

  • 専門的知識がないので、全体的な進め方の指南役として設計事務所や管理会社を頼ってしまう(場合によっては、いいなりになってしまう)。
  • 特定の個人(組合員や理事の関係者)の関与を極力避けるため、クレームが付きにくい公募方式や入札形式を採用する。
  • 設計事務所や工事会社を選定する際に、金額が一番安い会社に発注する。

以上のような選択肢は決して間違っていないのですが、自分たちの頭できちんと考えずに、あまりにも形式にこだわりすぎるため、手順(手続)や見積金額だけで設計事務所や工事業者を選んでしまいます。ここに談合が入り込むすきができてしまいます。

信用している関係者の裏切り行為

談合といえば、工事業者間で話し合ってインチキな見積書を提出する工事業者が一番悪いと思いがちですが、実はそうではありません。
本当の悪」は、裏で談合を取り仕切っている設計事務所や管理会社なのです。本来、彼らは信頼関係を基盤とする民法上の委任(準委任)契約に基づき、管理組合のために業務を行わなければならない立場にあります。しかし、実態は、管理組合が気付かないことをいいことに、信頼を裏切る行為を繰り返し、多額のキックバックをかすめ取っています。

建設業界特有の事情といってしまえばそれまでですが、あまりにもあこぎなやり方だと思います。また、談合が常態化しているこの業界では、やっている関係者らも自分たちは悪いことをやっているとは考えず、「会社の利益のためにはやむを得ない。」程度にしか考えていません。つまりお金をいただいている管理組合の利益のためではなく、自分たちの利益ために一生懸命になっているということです。
設計事務所や管理会社は管理組合の予算額等をすべて知っているわけですから、そのような関係者が工事業者と結託して裏切り行為を行うと、管理組合はたまったものではありません。
冒頭にご紹介した談合の事例も、設計事務所が設計価格を業者に漏らしていることは明らかです。

管理組合は一見客

マンションのライフサイクルにおいて、外壁や屋上の大規模修繕工事は十数年に一度の周期で行います。また、給排水管の更新工事においては、一回限りの場合もあります。
これらのことを考えると、マンションの大規模修繕工事を生業としている設計事務所や工事業者にとっては、マンション管理組合はいわゆる「一見客」なのです。

ですから、そもそも「誠実に長い期間お付き合いをしたい。」という気持ちが希薄な業者にとっては、逆にありがたい存在です。マンションストックが増え続けている現在においては、大規模修繕工事を行うマンションは年々増加していますので、一発勝負で大儲けをすることができる「獲物」はいくらでもいるということです。

3.談合されないためには

では、管理組合が、談合で多額の修繕積立金を毀損しないためにはどのようなことを考えたらよいでしょうか。

本当に信頼できるコンサルタントを見つける。

設計事務所の中には談合を取り仕切ってキックバックを貰うようなことをやらない真面目な事務所もありますので、そのような設計事務所に業務を依頼することです。しかし、業界事情等に詳しくない管理組合がこのような設計事務所を見つけることは簡単ではありませんし、そんな設計事務所は、管理組合が公募で募集しても応募してくることはまずありません。
なぜなら、そのような設計事務所は、信用と評判で仕事の依頼が来ますし、管理組合が行う公募に参加して見積りを提出しても、管理組合が見積金額だけで評価してしまうことを知っているからです。

ところで、私の個人的な感想ですが、このような真面目な設計事務所の人たちにも申し上げたいことがあります。
それは、もう少し管理組合の目線でお仕事(営業活動を含む)をやっていただきたいという点です。

真面目な設計事務所の人たちの共通点は(あくまでも私見です)、

  • 仕事は当然によくするが、お話があまり上手ではなく、とっつきにくい面がある。
  • 悪気はないのだけれども、難しい専門用語をよく使い、管理組合(素人)の話を十分に聞いてあげず、「自分にまかせておけば絶対大丈夫」という意識が強い。
  • 自社の見積内容を、管理組合によくわかるように説明するのが得意ではない。

等です。そのうえ見積金額は問題設計事務所よりも高いのですから、なかなか採用されません・・・
決して悪気があるわけではないので私も歯がゆいのですが・・・

工事業者の選定には、設計事務所や管理会社を関与させない。

談合が一番起こりやすい過程は、工事業者を選定する段階です。
特定の個人の関与を避けるため、専門紙等を使って「公募」という方法で工事業者を募集する場合が多いのですが、実はこの段階で談合のメンバーが決まってしまいます。
募集については、予め公募の条件(資本金、業歴、施工実績、現場代理人の条件等)を決めて行いますが、多くの場合は設計事務所や管理会社が関与して条件を決めていきます。

談合を取り仕切る設計事務所等は、自社のいうことを聞く工事業者仲間が決まっていて、それらの業者しか応募できない条件を管理組合に提示します。
また、そのことを知っている他の工事業者も「どうせ応募しても、あの設計事務所なら自分の会社に仕事が来ることはない。」ということを知っていますので、端からあきらめてしまうこともあります。
ですから、公募の時点では既に談合メンバーが出来上がっているわけです。

当事務所が大規模修繕のコンサルティングを行う場合には、見積りを依頼する工事業者の選定には設計事務所や管理会社を関与させません。
つまり、管理組合がどの工事業者に見積り依頼をしたかは、設計事務所は分からないのです。
談合は、見積りに参加した全ての工事業者が「一枚岩」となって話し合わないとうまくいきませんので、どの業者が見積参加しているかとか、全部で何社が応募しているのかなどが分からないとそもそも談合はできません。

詳細については、専門的な知識や当事務所独自のノウハウ等もありますので割愛しますが、工事業者の選定に設計事務所や管理会社を関与させない手法はかなり有効です。

金額だけでコンサルタントや設計事務所を選ばない。

多くの管理組合はコンサルタントや設計事務所を選ぶ際には、金額が一番安いところに発注します。
管理組合の大切なお金を有効に使わなければならないので当然のように思えます。しかし、前述のとおり、安い金額で受注しておいて、実際は裏で工事業者の談合を取り仕切り、多額のキックバックを受け取っている設計事務所はとても多いのです。

彼らは、自分たちの受注金額の何倍ものキックバックを工事業者から受け取りますので、受注金額は安くても構わないのです。

設計事務所の見積書を確認する際は、合計金額だけを見るのではなく、どの業務にどれだけの手間をかけて実施し、その作業単価はいくらなのかよく見たうえで、工数や単価が妥当であるかをきちんと見極めてから決めるべきだと思います。
作業の単価が著しく安いと思ったときは「なぜこんなに安いのですか?」と聞いてみて、納得のいく回答が得られなかったら怪しいと思って間違いありません。

コンサルタントや設計事務所にしかるべき(適正な)金額を支払ったとしても、工事金額に比べればさほど大きな金額ではありませんので、ここで騙されないようにしていただきたいと思います。

4.脱談合に向けて・・・

今回私がこのような記事を書いたことは、業界の人たちから見ると「禁じ手」かもしれません。
しかし、マンション管理の世界で仕事をするようになり、大規模修繕工事においていとも簡単に談合が行われ、専門的知識のない管理組合がその餌食になっているのを見ていると、いつかはこのようなことを書いてみようと思っていました。

最近、マンションの大規模修繕(リフォーム)に関する技術や管理組合のニーズの把握等を研究している団体(マンションリフォーム技術協会/MARTA)が、「提言」と称し、不適切なコンサルタント(設計事務所)の横行及びその実態並びにそれらの排除に関するコメントを機関誌に掲載して波紋を広げています。
その内容は、私も拝見しましたが、まさに私が申し上げたいことが書かれていました。

追記(注意) 2017年1月には、国土交通省からも、設計コンサルタントの活用に関する通知が出ています(大規模修繕工事の不適切コンサルタントについて(国土交通省からの通知について)

最近は、インターネットの普及などで、管理組合も大規模修繕に関する情報を多く得ることができるようになりました。そして、私以外にもこの業界では談合が横行していることを唱える人も増えてきました。

管理組合もだんだん知識が増えていくと思いますので、この業界もいつかは「脱談合」に向かって進んで行かないとやっていけなくなる時代が来ると思います。

先日ある工事業者が私の事務所を訪ねてきました。
話しの内容は、「今後はコンプライアンスを重視し、業界特有のお付き合いからは足を洗います。そして、自社の品質と価格で勝負していきます。」ということです。
やや回りくどいいい方ですが、早い話が「もう談合はやりません。これからは実力勝負でやっていきます。」ということでした。逆にいえば、「今までは談合をやっていました。」とも解釈できますが...
これからは、実力で勝負しようとするこのような工事会社が増えていくことを期待したいと思います。

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