エレベーターのメンテナンス等について
今回はマンションエレベーターのメンテナンスに関する知識について掲載します。
昨年実績ではエレベーターは全国で50万台の設置を超えています。エレベーターはマンションの中でも重要な設備であり、事故が発生すれば大変なことになるので、きちんとした維持管理が必要になります。
しかし一方ではメンテナンス費用が管理費の中に占める割合もかなり大きく、合理的な金額の節約も検討する必要があります。
1.エレベーターの点検について
建築基準法第12条2項により、エレベーターに関しては有資格者により現在は1年に1回の法定点検が義務付けられています。
又、検査結果は、地域法人を経由して特定行政庁に報告し、その書類は3年間以上保管することになっています。
一方、法定定期検査とは別に任意にメンテナンスを実施しているマンションがほとんどで、安全運行確保の目的で行われています。
2.メンテナンスの種類について
ア)フルメンテナンス契約
点検に際して主要部品の交換や必要な修理を含んだ契約になります。特徴としては
・メンテナンス費用が割高である。
・保守契約に関して別途に部品代や修理代が発生しないので長期修繕計画が立てやすい。
・ただし、三方枠や乗り場の扉、籠内の床修理、その他リニューアルに伴う改造工事の費用は別途。

フルメンテナンスのイメージ
イ)POG契約
Parts Oil Greaseの略で定期点検のほかは、契約範囲の部品交換は含まれますがそれ以外の修理や部品代は全て別途になります。
・メンテナンス費はフルメンテナンスに比べて当然に安い。
・状況によっては一時的に多額の修理費用が発生する可能性もあるので長期修繕計画にしかるべき修理費用を計上しておく必要があります。
POG契約のイメージ
ウ)契約形態としてはどちらが特か?
一概には言えません。
・竣工当時は故障が少ないのでPOG契約にし、10年位たって故障が多くなりそうな時にフルメンテナンス契約に切り替えると良いと思いますが、そのような虫の良い契約にはメンテナンス会社は一般的には応じてくれません。
・フルメンテナンスとPOG契約の月額料金差は約15,000円~20,000円/台なので、マンション内にエレベーターに詳しい人がいる場合はPOG契約でも良いのですが、そうでないならばフルメンテナンス契約のほうが無難かもしれません。
3.エレベーターの耐用年数は?
エレベーターの耐用年数についてはメーカーサイドでは約25年といっていますが、実施は30年以上大丈夫のようです。
使用頻度、設置場所にもよりますが30年以上長持ちしているエレベーターはたくさんあります。
しかし、長期修繕計画を立てるときは30年でエレベーターリニューアルを検討しておいたほうが良いと思います。
4.メンテナンスにおける緊急時対応について
ア)故障等で籠の中に閉じ込められた時
・典型的な事故例です。
・メンテナンス会社は緊急出動を行います。
・籠の内部にインターフォンが設置してあればメンテナンス会社のサービスセンターと連絡(会話)が可能なので対応状況などの情報提供を受けられます。
・又、インターフォンが設置していなくても押しボタン等でセンターに発報しますので救出の処置を受けられます。いずれにしてもあわてないで冷静に対応することです。
・連絡から作業員到着までの一般的な時間は約30分、修復時間は1時間以内が相場ですが、サービスセンターの場所やサービスマンの数によっても違うので、自分の地域とメンテナンス会社のカバー地域を十分検討して契約するほうが良いと思います。
イ)子供が中で暴れて停止したとき
・子供が籠の中でふざけて 暴れたりした時は、地震波とは区別して識別し、緊急停止します。
・その後最寄階に移動しドアを開放します。
・開放後は自動で閉鎖し、自動復旧するのでその後は正常に稼動します。
ウ)地震の時
・地震波をエレベーターが感知し、小規模地震の時(震度3以下)は最寄階に停止し、ドアを開放します。
・開放後は自動復帰しその後は正常に作動します。
・規模が大きい時(震度4以上)も同様の動作を行いますが、今度はエレベーターは自動では復帰しません。係員が現地を訪問しての復旧作業が必要になります。
5.エレベーターの賠償責任保険と防犯対策について
ア)賠償責任保険
メンテナンス会社の中には、自社でメンテナンスを実施しているエレベーターが原因で事故が発生した時でも、多額の賠償責任保険(身体上1事故10億円)を付保している会社もあるので事前に良く調査したほうが良いでしょう。
イ)防犯対策
・エレベーターの防犯対策には防犯カメラが有力です。
・最近は監視カメラシステムを月額5,000円~という価格で実施しているメンテナンス会社もあり、防犯対策に役立てている管理組合も増えています。
6.メンテナンス会社の選択は?
では、メンテナンス会社はどのように選定すればよいのでしょうか。
多くの管理組合は竣工時に設置したエレベーターメーカー系列のメンテナンス会社をそのまま起用していると思います。
しかし最近では価格の面やその他を比較検討して独立系のメンテナンス会社を起用する組合も多くなっています。
この際あなたの管理組合でも検討してみる価値はあると思います。
ア)メーカー系と独立系のメンテナンス会社について
①メーカー系
・いわゆる5大メーカー系列のメンテナンス会社で、三菱、日立、東芝、フジテック、オーチスの資本家にある会社。
②独立系
・メーカー系に属していない独自のメンテナンス(製造も含む)を実施している会社で最近急速に業績を伸ばしています。
・主要な会社としては SECエレベーター、コスモエレベーター、辰東エレベーターなどがあります。
イ)それぞれの特色について
①実績と信用度
・さすがにメーカー系のメンテナンス会社のほうが一日の長があり、現在でも多くのシェアを確保しています。
②価格
・価格に関しては独立系のメンテナンス会社のほうがメーカー系よりも30~40%安い場合があり、リーズナブルな価格体系をバックに最近では急速に業績を伸ばしています。
③部品対応について
・エレベーターの部品は約2,000種類ありますがそのうちの80%は半用品で対応可能です。
・残りの20%がいわゆるメーカー巡視部品で、独立系のメンテナンス会社も各メーカーから仕入れています。
・一時、メーカーが競合する独立系の会社に純正部品の納入を拒否して裁判になりましたが、平成2年の大阪地裁判決で独立系の会社が勝訴し損害賠償の請求が認められ、その後は公取委の指導もあり現在では部品の供給を拒否するメーカーはなくなりました。
・しかしメーカーは純正部品の在庫が豊富なので、独立系の会より1日~2日位早く処理が可能な場合があります。
④その他の対応について
・基本的にはほとんど差がないと考えていいと思います。
ウ)メンテナンス会社選定のポイントは?
はっきり言って、絶対にこれとこれが正しいということは言えません。
・メーカー系のメンテナンス会社は安心して依頼でき、自社製品の在庫も問題がないので故障してもほぼ翌日には修復できる。
・一方独立系の会社は修復に対してはメーカー系の会社より1日程度時間がかかる場合もあるが、月々のメンテナンス費用はかなり安くなる。
・最終的には管理組合の判断で決定するしかないが、この不況の時代には簡単に管理費や修繕積立金の値上げができません。
・長期間にわたる維持コストの削減(節約)は将来の積立金の額にも大きく影響するので真剣に検討する価値があると思います。
今回はこれにて失礼いたします。