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2005年01月22日  [ カテゴリ:マンション管理士奮闘記(事例紹介) ]

今回は私のマンション管理士事務所が実施した「マンション管理費等の滞納者に対する法的措置(管理費滞納問題コンサルティング・支援)」の実施についてです。

1.背景

長引く経済不況やリストラの影響で区分所有者の経済状況が悪化します。 そして、月額2万円前後の管理と修繕積立金が払えなくなります。

2.抱える問題

・契約により、滞納に対する督促は管理会社の業務となっていますが、一定期間を経過すれば管理組合の責任で実施しなければならなくなります。しかし、理事は督促などやりたくないし、ましてや法的措置といっても管理会社にいえば多額の弁護士費用が掛かるし、自分でやることができるといわれても実際にはやり方がわからないものです。輪番制1年交代の理事ならば、このまま黙って次期の理事に先送りをしようと思ってしまうのも仕方ないことです。 そのためいつまでたっても解決しません。 ・滞納が多くなってくると、日常の支払や大規模修繕の支払い資金がショートして修繕が実施できなくなる可能性だってあります。 ・また、滞納が多くなってそれが表面化すると、「あの人が滞納しているなら私も…」や「あの人の滞納のことは何もいわないでどうして私のペットのことだけ問題にするの」など不公平感からくるマンション内のコミュニティー悪化が考えられます。

3.解決策

・管理会社任せにしないことです。 ・ただし、区分所有者と対面しての督促はできるだけ理事会はやらないで、管理会社にやらせた方がいいでしょう。 理事会が実施する督促は書面それも「内容証明郵便」にて行なうことです。 ・早めに対応することです。できれば滞納が始まってから6ヶ月が経過したら内容証明郵便を発送することです。 ・余計な費用をかけたくないが自分たちで実施できる自信がないのならば専門家を起用する方がいいと思います。できれば弁護士よりはマンション管理士のほうがはるかに安い費用で実施できます。

4.結果

・管理組合が滞納に対して早めに対応すると、法的措置まで行かなくてもその前の内容証明郵便による督促の時点で解決する場合もかなりあります。 ・管理組合が滞納に対して「絶対に許さない」という姿勢をはっきり区分所有者に対して知らせると、かなりの牽制効果があり、滞納をする人がだんだん少なくなってきます。

事例紹介

1.はじめに

この問題は守秘義務や場合によっては特定の人物の名誉等に関わるデリケートな問題を含んでいます。よって事例に関してはノンフィクションではありますが一部仮名を使用しています。

2.滞納の増加

平成15年に実施された国土交通省の「マンション総合調査」では全く滞納がないという管理組合が前回の調査よりも大幅に増えています。しかしこの数字だけを見てマンションの滞納問題が減少しているとはとても考えられません。そもそもこのマンション総合調査は2500の管理組合にアンケートを実施して回答してきた組合は1000組合ちょっと。全国にあるマンション管理組合の数は6万~7万とも言われています。 とても全国全てのマンションを代表しているとは思えません。 しかもマンション総合調査に回答をよせる管理組合は管理に対する意識が極めて高い管理組合で普段から滞納に関しては真剣に対応しています。 しかし、実際問題としては、私のところに来る相談でも最近は滞納に関する相談は極めて多いのです。

3.どうして滞納問題が発生するか?

当然のことながら社会情勢や経済情勢の悪化で経済的に困窮した区分所有者が管理費等を払えなくなってきます。ここでは個々の区分所有者が滞納に至る経緯や理由に関しては申し上げません。その代わりに何故、滞納が発生しているのに管理組合が適切な対応をとらないかと言う理由を考えてみました。

ア)無関心がゆえに情報の入手が遅れてしまう。

 自主管理の管理組合を除いて多くの場合は管理業者を起用して日常管理をこなしています。ところが管理業者の中には毎月きちんと月次報告を管理組合(理事会)に行なっていない業者も結構あります。又、月次報告書を提出していても管理費等の収納状況や滞納者リストを添付していない場合や「未収金」と簡単に記入して書類のみを提出するのでまさか「滞納」が発生していると分からないこともあります。  しっかりした管理業者が提出した月次報告書を理事会がきちんとチェックしていれば早期に滞納を発見できますが、普段から無関心だと総会資料を作成する時に初めて分ったなどということはざらです。 私が知っているある管理組合では2年以上も経って始めて問題になったりしています。

イ)滞納が発生しても「他人事」だと思ってしまう。

 これも結構多いパターンです。 「自分はきちんと払っているから…」との判断ですが、滞納が増えれば最終的にはそのツケはきちんと支払っているまじめな区分所有者に回ってくることをあまり考えないようです。 日常管理の費用や、修繕工事の費用などを滞納者に代わって立て替えてあげているようなものです。

ウ)適切な対応策が分らない。

 「滞納は問題である、だから何とかしないと…」とは分っているのですが、ではどうやって対応したらよいのかいい考えが浮かびません。 管理業者はもともと自分のお金ではないから相談してものらりくらり、「滞納者の方にもいろいろ事情がありまして…、しかもプライバシーの問題も…」などとどちらの味方か分からないようなことを言い出します。弁護士さんに依頼しようにも回収するのに弁護士費用のほうが高く付きそうだし、かといって自分が直接「滞納者」とかけあって交渉したり、回収したりするのはいやだし… というわけで時間ばかりが経ってしまい気が付いた時はすぐに数十万円になっています。

4.事例・滞納者に対する「少額訴訟大作戦」

実際に私が体験した滞納者への裁判をお話できる範囲でお話いたします。
概   要
規   模   神奈川県内の100戸以下のワンルームマンション
滞 納 額    約30万円(遅延損害金含む)
滞 納 者    非居住区分所有者(仮名で小柳さん)
私の立場     外部理事長

(1)まずは簡易裁判所への相談

 最初に考えたのはどの方式で裁判を実施するかです。
「普通訴訟」か「支払い督促」か「少額訴訟」か、それぞれ特徴があり、「金額」、「相手の居住地」、「証拠」、「相手の状況(職業)」などいろいろな条件を考えて選択する必要があります。詳しいことは省略いたしますが私は過去の経験から今回は訴額が60万円以下だったので少額訴訟を選択することにしました。相談した簡易裁判所の書記官もそれがいいのではないかと言ってくれました。
皆様は意外に感じられるかもしれませんが簡易裁判所の書記官は概ねどの裁判所でもかなり親切に教えてくれます。

(2)いよいよ訴状の提出

 訴状に関しての書き方は特に制限はありませんが、以前千葉市で実施した時のフォームを参考にして記入しました。
慣れていたつもりですが、それでも数点の指摘を受け訂正したあとようやく提出して受理されました。
さあ、第1回目の公判日の設定です。書記官からスケジュール表を見せられ最も早い日でも約1ヵ月後でしたがその日を予約?して無事提出は完了です。

(3)特別送達郵便

 裁判所の封筒で被告にいわゆる「呼び出し状」が届きます。普通の人は相手がここまでやってくるとは思っていませんからびっくりします。そしてこの時点で「ごめんなさい払いますから…」と言ってくる場合が多いのです。
案の定、小柳さんも「答弁書」を出してきました。「原告の主張は認めます。お金も払います。でも資金的に苦しいので分割でお願いします。」という内容でした。
私は内心「やった!これで回収できる。」と思いました。早速書記官とも連絡をとりましたが以下はそのやり取りです。
私  :「答弁書をいただきました。ありがとうございます。」
書記官:「これで和解が可能と思います。小柳さんにも公判当日はきちんと出廷して原告と話し合って解決しなさいと言いました。」
私  :「今後の支払い等についても話し合いの対象になりますか?」
書記官:「はい対象になります。」
やはり裁判をやってよかったと思い、後は公判の日に被告と話し合う準備のみを管理会社の社員とやっていました。
「管理費を2年以上もあつかましく滞納する小柳さんはいったいどんな顔をしているのだろう?」などと考えながら、今回はこれで簡単に解決すると考えていました。

(4)あきれた公判当日

 ところが公判当日、指定の時間になっても小柳さんは現れません。
書記官も裁判官も定刻より15分遅れまで待ってくれましたがそれでも現れませんでした。
仕方なく欠席裁判で審議が始まります。当方の主張を全て述べたうえで証拠調べも終わり裁判官が「どうされますか?判決を求めますか?」と聞いてきたので私は「死刑にして下さい」と言いましたが、こういう場所での冗談はあまり受けませんでした。その後裁判官は淡々と「請求どおりの金額を払え」「裁判費用は被告の負担」「仮執行ができる」旨の判決を下して20分足らずで終了しました。

(5)すかさず強制執行手続き

 こんなあつかましい被告は裁判で白黒つけてもどうせ払いっこないと思ったので、その後はルールに基づき「強制執行」の手続きを開始することにしました。
可能性のある方法は

ア)小柳さんの財産(例えば預金通帳など)を差し押さえる。
 しかしこの方法は調査能力のない管理組合にとっては現実的には不可能でした。
イ)マンションンの賃借人の家賃を差し押さえる。
 この方法も有力ですが、この場合は賃借人が1ヶ月間で3日程度しか住んでおらず、「差押命令」が賃借人にきちんと送達されない可能性が高く、功を奏さないと思いました。管理員さんから賃借人の名前などは聞いていたのですが住民票もその住所にはなく、打つ手がなく困りました。
ウ)小柳さんの給料を差し押さえる

 最後の手段は小柳さんの給料を差し押さえる方法です。
勤務している会社は連絡先帳簿により把握していたのでもうこれしかないと思い、早速会社の商業登記簿を取って、手続き開始です。

(6)またしてもあきれた事態

 商業登記簿謄本を取ってまたしてもあきれました。実は小柳さんはその会社の社長だったのです。しかも資本金数千万円のIT関連の会社で、HPも調べたらベンチャービジネスで大活躍しているように感じられました。
こんなかっこいい会社の社長がどうして30万円くらいの管理費を滞納するのか信じられませんでしたが今後の方針決定について私は迷いました。
ある会社の社長に対して、「お宅の社長は○○マンションの管理費を滞納しているので役員報酬を差し押さえて当管理組合の方に支払いを回してください。」と言ってみても実際は効果があるのだろうかと思ったからです。
 しかし、地方裁判所を訪問し実情を話して相談すると、法律的には可能であることが分かったので「破れかぶれ」、「だめもと」で正式に強制執行の申し立てをして来ました。
後は相手の出方を見守るだけです。

(7)意外な結末

 手続きをして10日位だったでしょうか、小柳さんから私宛に直接電話がかかってきました。
電話の声や話し方はとても丁寧で私が抱いていた「極悪非道」のイメージは全くありません。
「ご迷惑をおかけしました。自分が個人で全額支払いますのでよろしくお願いいたします。」という内容でした。私は管理会社の担当者と至急連絡をとり裁判の訴額以外に、「裁判費用」、「コピーや謄本取得の諸経費」、「私たちの交通費」及び「裁判以降の管理費等」など全てをまとめて請求しましたが全額支払ってくださいました。

 正直言って、ここに至る経緯から判断しても相当苦労するだろうと思っていたので解決して本当によかったと思います。
私は過去に滞納に関する複数の裁判を実施しましたが、いつも思うことは「滞納に関しては常に早めに対応する。」ことです。

※「管理費滞納問題」に関する詳しい内容や当事務所の考え方などは、私のマンション管理士事務所 ホームページをご覧下さい。

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