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実は大規模修繕工事の談合を招いている、管理組合の心理と行動

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2019年03月01日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

こんにちは。重松マンション管理士事務所の重松です。

前回は、「大規模修繕工事における、悪質な設計コンサルタントの談合の手口」をご紹介いたしました。
専門的知識に欠け、時間的制約のある管理組合は、自分たちのために考え、動いてくれることを期待して設計コンサルタント(以下設計コンサル)に依頼します。しかし、その設計コンサルが工事会社らと結託し、時間をかけてコツコツ貯めてきた大切な修繕積立金を巧みにかすめとってしまうのです。

全く以て許しがたいことですが、なぜこうした被害が後を絶たないのでしょうか?

建設業界特有のアンチ・コンプライアンス体質」や「輪番制や素人などで構成される管理組合特有の組織・運営方法」、「大規模修繕工事が十数年に一度の特殊な工事であること」など、過去に書いてきたとおり様々な要因がありますが、前回ご紹介した悪質な設計コンサルタント(以下悪質コンサル)の手口が、「多くの管理組合に見られる心理や行動にピタリと当てはまる巧みな方法であること」も、大きな要因だと考えています。
今回は、この点を中心にご紹介していきます。

裏目に出る、管理組合「心理」と「行動」

管理組合を構成する理事会は専門家集団ではありません。
大規模修繕工事に特化した専門委員会が設置されることもありますが、その委員とて、ほとんどの場合、決して専門家ではありません。

そのような中で、多額の修繕積立金を使って行う一大事業を滞りなく遂行しようと考えた場合、より良い・安心・安全と思える進め方、あるいは、組合員から文句をいわれないような進め方、何かあった際に責任を追及されないような進め方をしようと思うのは、当然のことです。
そしてその結果、例えば以下のような行動をとります。

個人の思惑や恣意性は排除しないと・・・
談合等の不正が行われないようにしないと・・・
  • 公募しよう!
  • 入札形式なら、より安全だろう!
管理組合のお金は無駄に使わないようにしないと・・・
  • 出来るだけ安い設計コンサルや工事会社に発注しよう!
予算準拠主義(予算は超えないようにしないと・・・)
  • 予算内なら安い方が良い!
  • (一方で、高かったり追加工事を提案されても)予算以内なら、まぁいいか!
しっかりした会社にお願いしたいなぁ・・・
  • いろいろな条件をつけよう!
  • 安い方が良いけど、一社だけ極端に安い会社はちょっと怖いな・・・

いかがでしょうか?
どれももっともらしく、そして、理事会が説明しやすく、かつ、組合員も納得しやすい理由(行動)ではないでしょうか?

また、「何が問題なの?」「妥当な行動では?」と思われた方もいらっしゃると思います。
そう思われても決しておかしなことではないのですが・・・実は以下のように裏目に出るのです。

個人の思惑や恣意性は排除しないと・・・
談合等の不正が行われないようにしないと・・・
  • 公募しよう!
  • 入札形式なら、より安全だろう!
  • 悪質コンサルも堂々と応募してくる
  • 悪質コンサルにとって、実は入札形式は談合がやりやすい
管理組合のお金は無駄に使わないようにしないと・・・
  • 出来るだけ安い設計コンサルや工事会社に発注しよう!
  • 悪質コンサルは、安い設計費用で応募してくる
    ※安くしても、談合で回収できる仕組みになっている
  • 談合で十分に儲かる金額に調整した上で、安値を掲示した仲間の工事会社が選ばれるようにする
    ※安いと思って選んでも、談合で底上げされているので、そもそも安くない
予算準拠主義(予算は超えないようにしないと・・・)
  • 予算内なら安い方が良い!
  • (一方で、高かったり追加工事を提案されても)予算以内なら、まぁいいか!
  • 予算内で安値を掲示した仲間の工事会社が選ばれるようにする
    ※拠り所となる予算自体が、そもそも釣り上げられている場合も
  • 予算内で最大限にお金を取れるようにする
しっかりした会社にお願いしたいなぁ・・・
  • いろいろな条件をつけよう!
  • 安い方が良いけど、一社だけ極端に安い会社はちょっと怖いな・・・
  • 堅実で真面目な会社を遠ざけてしまうことも
  • 談合と無関係の工事会社が適正価格を出すと、横並びの中で極端に安く見え避けられてしまう
    実際は他が高いだけなのに、適正価格を出した工事会社が異常に見えてしまう
  • 一方で、条件を満たす場合や工事をしない設計事務所の場合等では、安さが優先されがち

いかがでしょうか? ご理解いただけたでしょうか?
以上のように、管理組合の心理・行動が、結果的に悪質コンサル(場合によっては悪質管理会社)による談合等の不正を引き起こす、あるいはやりやすくする要因になってしまっているのです

そして管理組合は、自分たちが妥当な判断・行動をしたと思ったまま(自分たちが騙されていることに気が付かないまま)、一大事業が無事に完了したと思いこみ、ほっとしているのです・・・。

なお、前回の「大規模修繕工事における、悪質な設計コンサルタントの談合の手口」を併せてご覧いただくと、よりご理解いただけると思いますので、よろしければそちらもご覧ください。

【イラスト】まんまと悪質コンサルに騙されたことに気付かず喜ぶ管理組合

無事終わったその裏で、 実はまんまと騙されていたなんてケースも・・・

真面目な会社を遠ざける管理組合

もちろん、大規模修繕工事の設計・監理等を生業としている設計事務所の全てが悪質コンサルというわけではありません
真面目にコツコツと取り組んでいる設計コンサルも大勢いらっしゃいます。

彼らは、裏で工事会社に談合をさせて多額のキックバックを要求するようなことはしませんし、自分たちの仕事に誇りを持ち、堂々と業務を行っています。

しかし、価格の安さや、一見すると誰もが良さそうに思える表面的な指標、時には過剰とも思える応募条件を重視してしまう管理組合の心理と行動が、実は彼らを遠ざけてしまっているのです

工事会社の選定についても同様ですが、管理組合の立場で考えれば、「○○もあった方が良い」と、ついアレもコレもとなるのは仕方がないことです。誰だって「しっかりした会社」に依頼したいと思いますし、悪質な会社に騙されたくありません。

しかし、昨今ニュースを賑わす談合事件や偽装事件等を見ても、一見して優良に見える、しっかりして見える会社なら安心!、という単純なものでないことはご理解いただけると思います。むしろ、業績への執着や圧力が強い会社の方が、不正に手を染めやすい場合もあります。記憶に新しい、地銀の不正融資問題もそのパターンです。

そして、そのような管理組合の心理・行動が、図らずも堅実で真面目な会社が選ばれない、あるいは応募できない状態を生み、結果として、それらを巧みに利用する悪質コンサルの台頭を許す要因になってしまっているのです・・・

悪質コンサルの被害にあわないためには・・・

マンションにとって大規模修繕工事は、多額の修繕積立金を使って十数年に一度行う一大イベントです。組合員がコツコツためた修繕積立金を不当に詐取されることは許されません。

では、どうしたらそのような被害にあわないようにできるのでしょうか?
対策を取られてしまうのであまり詳しく書けませんが、今回は、過去の補足もしながら2点ほどご紹介いたします。

【1】設計事務所(設計コンサル)は、見積金額や会社規模だけで選ばない

合計金額の大小だけで判断しない

【イラスト】見積書専門知識がない管理組合にとっては、見積書一つをとっても難解です。
そのため合計金額だけを見て判断しがちですが、設計事務所の見積書を確認する際は、合計金額だけでなくその内訳までよく見て比較し、「なぜ安いのか(高いのか)?」等、不明な点は質問をするなどして、工数や単価が妥当であるかを見極めるよう努めてください。

過去の事例として一つ挙げると、工事会社の評価書作成の工数が少ない場合は注意が必要です。

評価基準をよく考え、表面だけで判断しない

工事会社の場合は、工事の完成や引渡後の保証などの問題があるので、会社の規模や財務内容も含めた信用度(倒産リスク)は、重要な指標の一つになります。

もちろん設計事務所(設計コンサル)の場合もそれらを完全に無視するわけにはいきませんが、果たして同じような評価基準、優先順位で考えるべきものでしょうか? 過剰な条件をつけていないでしょうか? 表面的なスペックだけで判断しようとしていないでしょうか?

例えば・・・

  • 資本金は○千万以上!
  • 技術者(一級建築士)は○○名以上!
  • 図面と予算案を提出して!(契約前にタダで)

設計コンサルの業務はマンパワーが主体であり、単純な規模の大小よりも、実際にやってくれる担当者の人となりや、個人としての実力や経験等による部分が大きくなります

例えば一定以上のレベルにある管理会社であれば、フロントマンによって管理の質や満足度が大きく変わるのと同じ、といえば、少しはご理解いただけるでしょうか。

現在検討中であれば、本当にそれらが必要かどうか、どこまで優先するべきか、もう一度見直すことをオススメします。

時間をかけて面談し、書類やプレゼンだけで判断しない

困ったことに、悪質コンサルはプレゼン上手で対応も丁寧です。ですから、書類上だけでなく、対面上も、やっぱり「良さそうに」見えたりします。

従って、応募書類やプレゼン(資料)だけで判断するのではなく、じっくりと時間をかけて面談(ヒアリング)し、実際の担当者も含めて適任かどうか、信頼できそうかどうか判断することをオススメしています

面談やプレゼンの場に漠然と臨まない

直接話ができる面談やプレゼンの場は貴重な機会です。
その場の思いつきで聞くだけでなく、事前に質問する内容をしっかり考えておくなど、事前の準備も大切です

また、出来るだけ多くの人に参加してもらう、理事や修繕委員でない人も含め、出来るだけ多くの意見を求めることも有効な方法です。

重松マンション管理士事務所立会いの下、面談を実施している様子。
この時は、まず私が質問をした後に、各理事等が気がついた点などを質問していきました。

【2】セカンドオピニオンの活用や、設計事務所(設計コンサル)以外の信頼できるパートナーを起用する

しかしながら、準備や対応にかけられる時間にも限りがあります。
また、管理組合の心理を熟知している悪質コンサルは「良さそうに」見えるため、未経験の方が確信を持って判断することは容易ではありません。
それゆえ事態を重く見た国交省が、相談窓口を活用するよう異例とも言える通知を行ったのが実態です。

従って、自分たちだけでは自信がない場合、私たちマンション管理士をはじめとした、管理組合の立場に立ってくれる、信頼できそうな第三者にセカンドオピニオンを求める、または、パートナーに起用することが第二の対策になります

倫理規程があり、かつ、国交省が認める唯一の団体

マンション管理士を要している団体はかなりの数ありますが、国交省が認めている唯一の連合体は「日本マンション管理士会連合会」で、この傘下に各県一団体限定の都道府県マンション管理士会があります。千葉県であれば、一般社団法人千葉県マンション管理士会です。

このような団体に所属しているマンション管理士は、マンション管理適正化法の他にも厳しい倫理規程が課せられていますので、管理組合を騙したり、管理組合の不利益になるようなことに手を染めたりすることはありません
重松マンション管理士事務所のマンション管理士も全員マンション管理士会に所属し、さらに業界に先駆けて当事務所「独自の倫理規程」を整備し、業界初の「ノーリベート宣言」もしています

ちなみに、マンション管理士会に所属せずに業務を行っているマンション管理士も存在します(所属は義務ではありません)。お住まいの地域のマンション管理士会やその倫理規程とは無関係の場合もありますので、その点にはご注意ください。

もし、怪しい設計コンサルと契約してしまったら・・・

設計コンサルを選定したものの、「ちょっと怪しいかも・・・」とお感じの場合、あるいは、「怪しいか分からないけど、談合されずに工事会社の選定ができるかちょっと不安・・・」という場合でも、談合を防ぐことは可能です

設計コンサルに工事会社選定をやらせない

何より重要なことは「設計コンサルに工事会社選定をやらせないこと」、です。

前回の手口でご紹介したように、公募だろうが入札だろうが、悪質コンサルが工事会社選定を巧みにコントロールし、自分が意図する仲間の工事会社が選ばれるようにします。
また、彼らの仲間ではない工事会社も、彼らが仕切る工事だと分かると端から諦めて応募を控えてしまう場合があります。

ですから、「悪質コンサルを工事会社選定から排除すること」がもっとも有効な方法になります。ただし、実は内通者が・・・なんてこともあるので、工夫は必要です。

時にはやり直す覚悟を持つ

どうしても不信感が拭えない場合は、例えスケジュールに支障をきたすことになっても一旦中止し、納得できるまで調査したり、場合によってはやり直す覚悟が必要だと思います

当事務所は、設計コンサルとの契約後に不信感を持った管理組合からのご相談も多いのですが、例え契約後であっても、絶対に談合はさせません
実際、設計コンサルとの契約後にコンサルティングに入り、談合を防ぎ、数千万円の工事費用減額に繋げた例が幾つもあります。工事会社の選定を一からやり直した例も幾つもあります
もちろん、いずれの場合も、その後の設計コンサルの業務チェックにも目を光らせながら、工事完了までサポートしました。

さいごに・・・

最後の方はマンション管理士の宣伝になってしまった感もあり恐縮ですが、悪質コンサルは公表されているわけではありませんので、普通の管理組合がこれを見抜くことは困難です。
どのコンサルに尋ねても、「自分はホワイトだ!」といいますし、不適切な行為はやらない旨の誓約書にサインをしろといえば必ずサインをします

私たち業界の関係者はそれなりの情報をもっていますが、大変巧妙に行われるため、明確な証拠が出ることは滅多にありません。
それゆえ、マンション管理士といえども相応の経験やチェックスキル、情報網などがないとなかなか難しいうえに、その手口も進化・改良されていきます

一方で、最近では「談合はやらない」、あるいは、「重松事務所の案件では談合はやらない」、という工事会社も増えてきています

10年経ってもこうした記事を書くことになるのは嘆かわしい限りですが、管理組合が被害にあわないように、これからも考えを同じくする有志たちとこの業界を良くするために活動をしていこうと思っています。

なお、当事務所の「大規模修繕工事コンサルティング・支援」は、「設計事務所(設計コンサル)の選定」だけでなく、「管理組合の合意形成支援」「設計事務所の業務チェック」「工事期間中の、管理組合、設計事務所、工事会社間の各種事務調整」ほか、大規模修繕工事完了までをトータルサポートしています
悪質コンサルの存在を知って悩む管理組合はもちろん、しがらみや人数が多く合意形成が難しい管理組合、高齢化や小規模で人材不足の管理組合のほか、問題意識が高いが多忙な上経験が少なく、将来を見据えて早め早めに手を打ちたい築浅マンションでのご活用が増えています。
お困り事、お悩み事がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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悪質な設計コンサルタントによる、大規模修繕工事談合の手口

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2019年02月07日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

こんにちは。重松マンション管理士事務所の重松です。

管理組合の大切な修繕積立金を守る一助になればと「大規模修繕工事における談合の実態」を当ブログでご紹介したのが2009年のことでした。
当時としてはかなり思い切って書いた記事ですが、その後も「悪質な設計コンサルタントの存在について」等をご紹介しながら、少しでも多くの管理組合のお役に立てればと情報発信をしてきました。

そして、当ブログでも既にご紹介した通り、2016年11月に、マンションリフォーム技術協会(MARTA)が会報で「不適切コンサルタント問題への提言」を公表。翌2017年1月には、国土交通省が「利益相反行為を起こすコンサル」による被害防止のための相談窓口を指定し、日本マンション管理士会連合会にも協力を求めてきました。その後、複数のマスコミがこの問題を詳しく取り上げたのでご存じの方も多いと思います。

10年前の状況を鑑みると隔世の感がありますが、依然として管理組合が安心できる状況にはないのが現実です。
残念ながら悪質な設計コンサルタントがいなくなったわけではありませんし、公募や設計・監理方式を採用した大規模修繕工事の進め方が広まったことにより、それらのお陰で防げるようになった談合等の不正行為がある一方で、逆に彼らにとってはチャンスが増えている状況なのです。

そこで、先日1月30日に千葉県マンション管理士会の会員向けに行ったセミナーの内容をふまえながら、今回はさらにふみこんで悪質な設計コンサルの手口等をご紹介し、皆さまの大切な修繕積立金を守る一助にしていただければと思う次第です。

悪質な設計コンサルタントによる談合の手口

談合が絶えない建築業界

【イラスト】談合のイメージ「建設業界に談合はつきもの」といえばだれでも否定はしないと思いますし、昔から談合を巡る事件で建設会社の社長やお役人が逮捕されてきたことは珍しくありません。だいぶ前に「脱談合宣言」をしたはずの大手ゼネコンでさえも、最近、JR東海のリニア新幹線に関する建設工事で談合を行い、複数の逮捕者を出しています。

マンションにおける大規模修繕工事の世界でも、昔から悪質な談合が行われてきました。
まずは、実際にどのような方法で行われているか、その手口をご紹介します。

序章間違いの始まり・・・

そもそも管理組合が大規模修繕工事を実施しようとした場合、どのようにして進めたらよいかなかなか分からないのが実情です
多くの場合は、管理会社に相談したり、インターネットで調べたりして「設計・監理方式」を採用し、まずは設計事務所(いわゆるコンサルタント、以下「設計コンサル」)を選定するところから始めることが一般的です。

行政や各種団体が主催する無料セミナー等でも、「大規模修繕工事は設計・監理方式で進めることが望ましい」という内容が圧倒的に多いようですし、数年前のマンション管理新聞の調査でも、大規模修繕工事は70%前後が設計・監理方式で実施されているという記事を掲載していました。

この時点で優良な設計コンサルを選定することができれば被害にあわずに済むのですが・・・残念ながら、ここから間違った方向に進み始めることが多いのです

手口1廉価な見積金額を提示し、言葉巧みな説明で管理組合に入り込む

管理会社やセミナー講師等は、コンサルを公募する方法がある旨を管理組合に教えます。
そのように教わった管理組合は業界新聞の無料スペース等を利用して、設計コンサルを公募します。

そこに応募してきた悪質な設計コンサルから見積りを取得し、有望そうな事務所を呼んでヒアリング(聞き取り調査)を行うのですが、呼ばれた悪質な設計コンサルは手慣れたものです。
彼らが心得ていることは、「どこよりも安い見積金額を提示する」「業務の進め方などプロジェクターを使ってとても分かりやすく説明する」であり、受注できればしめたものです。

管理組合が、「一番安い金額」で、「実績も豊富」で、かつ「説明も上手」だった設計コンサルを選定することは決しておかしなことでありません。
逆にいうと、「見積金額は他より高い」「社歴は古いけれど実績数は多くない」「ヒアリングの際の説明も専門用語が多く、なんとなく分かりにくい」、こんな設計コンサルを選ぶ方がおかしいですよね。

【イラスト】悪質な設計コンサルのプレゼン

説明上手なので、とても良さそうに感じますが・・・

手口2不必要な改修工事までも提案し、高めの設計予算を確保する

そして、管理組合(理事会又は修繕委員会)が選定した悪質な設計コンサルが設計を始めます。
実は、この時点ですでに悪質な設計コンサルが描くストーリーが出来上がっているのです。

【イラスト】秘密のグループを作って情報交換をする悪質設計コンサルら悪質な設計コンサルは、自社のいうことを聞く工事会社と秘密のグループを作って常日頃から情報交換を繰返しています。そして、今回のこの物件はA社が受注できるようにしようと決めるのです。この場合のA社を「チャンピオン」といいます。

チャンピオンが決まると、本来設計事務所が行うはずの調査報告書の作成、施工数量の算出、予算書の作成等はチャンピオンになったA社が悪質な設計コンサルに変わって全て裏で実施します。
そうなると、悪質な設計コンサルの仕事はお客様(管理組合)の対応作業だけで、本来設計事務所としてやるべき業務はほとんど実施しません。ですから、安く受注しても構わないのです

また、自身が多くのキックバックを得るためや、仲間の工事会社の利益が多くなるよう、設計予算はなるべく多くとる必要がありますので、さほど修理が必要でない部位まで修繕の対象にしたり、高めの単価を設定したりして高額の予算を確保するようにします

びっくりなさるでしょうが、これが実態なのです。

手口3応募条件等を制限して参加する工事会社を限定し、チャンピオンが受注できるように工作する

工事会社を選定するときは、設計コンサルを選定したときと同じように公募を行います。

その際の応募条件は通常設計コンサルが提案するのですが、悪質な設計コンサルの場合、実質的には悪質な設計コンサルとグルになっている工事会社しか応募できないような条件を設定します
【イラスト】悪質な設計コンサルは、仲間ではない工事会社を落選させるよう工作します例えば、創業時期、資本金、施工実績等を巧みに設定し、悪質な設計コンサルの仲間の工事会社しか応募できないようにします。また、仲間以外の会社が応募してきても、管理組合に「この会社は工事が雑で業界ではとても評判が悪いですよ」や「以前に、死亡事故を起こしたことがあるからやめておいた方が良いですよ」などと適当なことをいい、結局は書類選考の段階で落選させ、見積りを依頼しないようにします。

これで、談合の下準備が完了です。

手口4予定通り談合を成立させ、チャンピオンが受注できるようにする

現場説明会(又は現地調査)や質疑応答を経て見積書が提出されますが、提出された見積書は悪質な設計コンサルが描いたシナリオどおりの金額で出てきます。A社が予算内で一番安く、次に続く会社も悪質な設計コンサルのシナリオ通りです。

管理組合は悪質な設計コンサルの勧めに従いA社を含む複数の会社からヒアリングを行いますが、筋書きができていますので予定通りA社に決まることになります

たまに、悪質な設計コンサルの意向に沿わず、管理組合の推薦等でお仲間以外の工事会社が見積りに参加できる場合があり、更に金額的にも安い金額を提示する場合があります。
悪質な設計コンサルは、管理組合の推薦なので邪険にも扱えず、ヒアリングに呼ぶ場合もありますが、その時はヒアリングにおいて、即座に答えられない意地の悪い質問をしたり、その会社のイメージが悪くなるような印象操作をしたりします

とにかく、悪質な設計コンサルにとっては何が何でもチャンピオンであるA社が受注してくれないと、自身が思い描いたビジネスモデルが完結しないのです。

手口5予定通り、チャンピオンが受注し、裏で多額のキックバックを頂戴する

こうして予定通りチャンピオンの工事会社が受注できたら、後は工事代金の数パーセントのリベートをA社から頂戴するという仕組みです

規模が大きいマンションの大規模修繕工事であれば、工事費用はすぐに億単位の金額になりますから、リベートも1千万円を超える場合もあります。このことを考えれば、最初の設計・監理の業務報酬などは安くても(極端な話しタダでも)構わないということがお分りいただけると思います

また、悪質な設計コンサルと工事会社の他に、管理会社も悪事に加わってシナリオを作成する場合もあり、実際は更に複雑な利害関係が発生しているケースもあります

加えて、お仲間でありリベートをもらう工事会社相手に厳しい工事監理を期待出来るわけもなく、結果として手抜き工事に繋がるケースもあり、ここまでくると、まさに踏んだり蹴ったりです。

なお、ご紹介した手口はあくまで一例であり、全てがこの通りに行われるわけではありませんので、その点ご注意のうえ、ご参考にしていただければ幸いです。

【イラスト】多額のキックバックを受け取る悪質な設計コンサル

コンサル料は安くても、実は工事金額に、それ以上の金額が上乗せされているケースがあるのです・・・

なぜこのような不正が起こるのか? その背景には・・・

大規模修繕工事に関する専門的知識のない管理組合は、自分たちを助けてくれるために設計コンサルを選定して業務を委託します。
ところが、信頼関係に基づき、管理組合のために業務を行わなければならないはずの設計コンサルがこのようなあこぎなことをして、管理組合の虎の子の修繕積立金を不当にかすめとってしまいます。

全く許せる行為ではありませんが、なぜこのようなことがいとも簡単に行われるのでしょうか。

実は管理組合の特性・心理が裏目に出ているのですが・・・それについては、次回改めてご紹介いたします。

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大規模修繕工事の「不適切コンサルタント」について、講師をしました

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2019年01月31日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

こんにちは。重松マンション管理士事務所の重松です。

先日1月30日に、千葉県マンション管理士会の研修会プログラムとして開催されたセミナーの講師を務めてきました。
テーマは、「大規模修繕工事における不適切コンサルタント問題」です。

管理組合(の修繕積立金)を狙った大規模修繕工事に関する問題については、談合の実態や悪質な設計コンサルタントの存在など、このブログでも何度か取り上げてきましたが、一昨年、日本マンション管理士会連合会に対して、不適切な設計コンサルタントの存在や相談窓口の活用等に関する「国土交通省からの通知」があり、その後各種メディアで大きく取り上げられたことも相まって、業界内でも今まで以上に関心が高まっていました。
事実、今回のセミナーも、案内直後に定員に達し、管理士会のスタッフは立ち見になるほどでした。

今回のセミナーでは、そうした背景をふまえながら、これまで当ブログでご紹介してきた内容から更に踏み込んで、生々しい談合の実態等を含めてお話ししました。それらの内容については後日別途書く予定ですが、今回はセミナーの様子のみ簡単にご紹介いたします。

当日の様子

講義内容は以下の通りで、私と施工会社の方2人で講師を務めました。

  1. はじめに
  2. 談合事例紹介
  3. 昨年までの業界の状況
  4. 管理会社、コンサルの動向
  5. 施工会社の体験談
  6. なぜ不適切コンサルが蔓延するのか?
  7. 管理組合が被害にあわないために
  8. さいごに

写真では分かりにくいですが、前述の通り会場は早々に満席になるほどで、50名の会場は後ろの方までギッシリ!
関心の高さをうかがい知ることができました。

ちなみに、写真は「管理組合が被害にあわないためのポイント」をお伝えしているところです。

「マンション管理士として何をすべきか?」を熱弁?中の様子。
今回のセミナーでは、まず不適切コンサルの存在と実際に行われている談合の実態を説明したうえで、マンション管理士が大規模修繕工事のコンサルティングを実施する場合のポイントや心得をお話しいたしました。
マンション管理士会所属のマンション管理士は、みな厳しい倫理規程の下に活動しているので釈迦に説法をするようではありましたが、このようなことが蔓延しているなか、絶対にマンション管理士の信頼を損なうことがないよう、想いを込めてお伝えしました。

20190130CMAセミナー写真03

千葉県マンション管理士会顧問・マンションコミュニティ研究会代表の廣田信子さんも参加され、最後の質疑では何点か質問をされていました。

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エレベーターのリニューアル(交換・改修)2~制御リニューアル実施事例とポイント

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2018年09月08日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

こんにちは。重松マンション管理士事務所所長の重松です。

前回に続きエレベーターのリニューアル第二弾です。
今回は、実際に制御リニューアル方式でエレベーターのリニューアルを実施したマンション管理組合の事例を基に、検討・実施時に知っておくと良いポイントをご紹介いたします。

簡単なおさらい(3つのリニューアル方法)

前回、エレベーターのリニューアルは、大きく分けると「フルリニューアル」と「部分的リニューアル」の2通り、そして、細分化すると「①全撤去リニューアル」「②準撤去リニューアル」「③制御リニューアル」の3通りあることをご紹介いたしました。①全撤去リニューアル>②準撤去リニューアル>③制御リニューアルの順に、大がかりなリニューアルになります。
それぞれの特徴をまとめた表を一部抜粋して再掲いたします(諸条件により例外も出てくるので、目安として捉えていただければ幸いです)。完全版は前回記事をご覧ください。

 

フルリニューアル

部分的リニューアル

①全撤去リニューアル

②準撤去リニューアル

③制御リニューアル

概要

全て撤去し、最新のものに総交換

既設品のごく一部を残して交換

※建物に固定されている三方枠、敷居等

制御系の交換・機能追加が中心
三方枠やかご室等は継続利用

建築確認*1

必要

要確認
※必要な場合が多い

一般的に不要
※必要な場合もある

工期

約25〜40日

約15〜25日

約3〜15日

コスト

*1:「建築確認」とは、建築基準法に基づき、建築物などの建築計画が建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを着工前に審査する行政行為(Wikipedia

「制御リニューアル」実施のポイント

「①全撤去リニューアル」「②準撤去リニューアル」については新設工事とあまり変わらないため、今回は「③制御リニューアル」の事例に基づいてご紹介いたします。

【事例】神奈川県内マンションにおける制御リニューアル

  • 築年数:29年
  • 対象エレベーター数:2基
  • 検討開始から工事終了までの日数:約12ヶ月
  • リニューアル費用:約1,600万円(オプション込)
  • 工期:30日(15日×2基、※製作期間90日)
  • メンテナンス費用(契約):約7.5万円/月(フルメンテナンス契約)

【1】見積り取得時 〜競争原理を働かせてコストダウン

1)共通仕様書の作成+複数メーカーを加えての相見積り

よく、エレベーターのリニューアルには競争原理が働かないといわれます
理由は、他の商品のように複数のメーカーから見積りを取得することが難しいからです。

多くの管理組合は、現在設置してあるメーカーと価格交渉を行い、ほとんどが言い値で発注することになります。現メーカー以外ではリニューアルができないと考えるからです。また、大手メーカーの場合、他のメーカーに見積依頼をしてもまともに取り合ってくれなかったり、同様の高い見積書が出てきたりします。

そのようなことをなくすため、私は、共通の仕様書等を作成し、条件を整えたうえで、複数のメーカーから見積りを取得することをオススメしています。
その上で、各社の提案を含めて比較検討をすることはさほど難しくありませんし、競争原理が働きます。

エレベーターリニューアル工事仕様書と見積要領書

リニューアル工事仕様書(左)と見積要領書(右)

今回の事例では、エレベーター2台のリニューアル工事に関し、当初現メーカーが掲示した金額2,400万円が、最終的に1,600万円まで下がることに繋がりました。最安値を掲示したメーカーよりはまだ高かったものの、その差が少なくなったこと等の理由から、今回は現メーカーを採用することになりました。当初掲示された金額から大幅なコストダウンになり、管理組合様も非常に喜ばれていました。

エレベーター制御リニューアル見積り結果

ちなみに、今回は、結果として現メーカーを採用することになりましたが、リニューアルに際し、他社メーカーを採用したケースももちろんあります。また、大手メーカー製のマンションも多いと思いますが、大手メーカー以外を採用したケースもあります。多くのメーカーが、技術力の向上や組合形式による保証体制の強化などに取り組んでおり、一昔前に比べ、大手メーカー以外も検討しやすい状況になっていると感じています。

なお、分かりやすく「コストダウン」に焦点を当てているため誤解があるかもしれませんが、重松事務所では、管理費削減(管理コストの削減)や大規模修繕工事等と同様、一貫して「とにかく1円でも徹底的に安く」というようなことはしないスタンスをとっています。もちろんオススメもしておりません。問題にすべきは単なる金額の大小ではなく、製品やサービスの内容と支払っている金額が見合っているか(適正か)の判断が最初であり、それを抜きに過剰な要求や競争をさせれば、サービスや品質の低下等、結果的に管理組合に不利益をもたらすことにも繋がりかねないからです。

一方で、このブログでも何度か注意喚起している大規模修繕工事の談合は言うに及ばずですが、「コストダウンの余地があるケース」があちこちで見られるのも事実です。
重松事務所では、管理組合様の状況やご意向をふまえつつ、管理組合側のコンサルタントとしてそのあたりを見極めながら、必要に応じて相見積りを取るようご提案したり、共通仕様書の作成や交渉等を含めた実施サポートをするなど、大切な財産を守り、マンションの資産価値の維持向上に貢献できるようサポートしています。

見積り取得のポイント①

  • 共通仕様書を作成し、比較検討しやすいように条件を整える
  • 複数のメーカーから見積りを取り、競争原理を働かせる

2)メンテナンス費用の見積り(ランニングコストの検討)

見積りを取得する際に注意していただきたいのは、設置(工事)価格にばかり目がいってしまわないことです
本体の設置(工事)価格だけでなく、設置後の保守点検費用(メンテナンス費)も併せて見積もってもらい、ランニングコストも含めて検討することで、より良いリニューアルに繋がります。本体工事が安くても、その後のメンテナンス費用が割高であれば、長期間で見たトータル金額では逆転する場合もあります。

エレベーターリニューアル工事とメンテナンス費用のトータル金額推移

最初にメンテナンス費も確認しておくことで、正しい判断が可能になるのです

また、メンテナンス契約には、大がかりなものを除く部品交換費用をあらかじめ含めた形で契約する「フルメンテナンス(FM)契約」と、(一部の)Parts・Oil・Greaseの費用のみを含めて契約する「POG契約」があります(それぞれについては後述「5.エレベーターの保守(メンテナンス)」参照)。単純に金額だけを見ると前者の方が高くなりますが(今回のケースでは概ね1.6〜1.8倍程度高い金額でした)、どちらの契約が適しているかは、個々のエレベーターの状態やマンション事情をふまえて判断する形になります。

今回のケースも、制御リニューアル工事費用に加え、メンテナンス契約内容やメンテナンス費用等をトータルで比較検討し、最終的に現メーカーのフルメンテナンス契約に決定いたしました。

見積り取得のポイント②

  • メンテナンス費用の見積りも取得し、長期的視野で判断する
  • 金額だけでなく、契約形態(内容)を理解した上で検討する

3)その他注意事項

安さだけで選ばない
大規模修繕工事と同様ですが、継続してメンテナンスが必要になりますので、サポート等を含めた長期的視野での検討が必要です。
竣工時の書類も、あらかじめ確認
管理組合がデータをきちんと管理できるよう、竣工時に引き渡していただく書類等も、見積り依頼の際に指示しておいた方が良いでしょう。当事務所の場合は、①電気図面、②調整マニュアル、③エラーコード表なども提出してもらうことにしています。

【2】既存不適格への対応(建築基準法への適合) 〜何をどこまでやるか

エレベーターのリニューアルは、建築基準法への適合も考慮する必要があります。

「制御リニューアル」の場合は一般的に「建築確認」が不要ですが、「制御リニューアル」の範囲で現在の建築基準法にすべて適合させることは難しいので、「どこまで対応するか」という問題があります。今回のケースも、現状の仕様を確認した上で検討が必要な項目を洗い出し、検討していただきました。
安全性の問題などで必ず対応せざるを得ない項目と、費用対効果を考慮して検討する項目がありますので、以下にご説明いたします。

※「建築確認」とは、建築基準法に基づき、建築物などの建築計画が建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを着工前に審査する行政行為(Wikipedia

1)既存不適格とは

エレベーターが設置された当時は法律(建築基準法)に適合して設置されたものの、その後法律が改正されたために最新の法律に適合しなくなった状態を「既存不適格」といいます

法律が変わったらその法律に適合させなければならない(これを「遡及(そきゅう)」といいます)のが原則ですが、建物やエレベーターはそう簡単に適合させられないため、「現在の法律には不適合だけれども当時の法律には違反していないので認める(処罰はしない)」という考え方です
ですから、今回の事例のような「制御リニューアル」ではなく、「全撤去リニューアル」や「新設」等で「建築確認」を申請するときは、現在の法律に適合させる必要があります

既存不適格とリニューアルのポイント

  • 設置当時は建築基準法に適合していたが、法改正により適合しなくなった状態のことを「既存不適格」と言う。現行の建築基準法には不適合だが、処罰はされない。
  • リニューアルに際しては、単なる老朽化対策としてだけではなく、建築基準法への適合や資産価値向上の面も含め、どこまで対応するかを考慮する必要がある。
  • 「制御リニューアル」ではなく「全撤去リニューアル」や「準撤去リニューアル(要確認)」の場合は、建築基準法に適合させなければならない

2)安全性からの観点

数年前の竹芝の死亡事故以来よく話題となるのが「戸開走行保護装置」です。
この機能も含めてエレベーターの安全性については後述「3.エレベーターの安全性」もご参照いただければと思いますが、建築基準法で義務づけられている装置のため、リニューアルの場合は必ず対応しているようです。また、同様に建築基準法で義務づけられている「停電時自動着床装置」と「P波センサー」も、ほとんどの管理組合が対応しています。

安全面のポイント

  • 戸開走行保護装置(扉が開いたまま動作しないための対策)
    制御回路の故障等で扉が閉まる前にかごが動き始めた場合に、緊急で停止させる装置のこと
  • 停電時自動着床装置(停電対策)
    エレベーターの電源が停止(停電)した場合に、本体設置のバッテリーが作動し、最寄りの階に自動停止して扉が開放される装置のこと
  • P波センサー(地震対策)
    地震の初期微動(P波)を感知して地震時管制運転装置に移行させるセンサーのこと

3)耐震基準への対応

耐震基準の変遷については後述「4.エレベーターの耐震性について」にまとめましたが、最新の基準は東日本大震災を受けて改正された「14耐震」です

この「14耐震」では、本体の構造と構造計算方式を定めているため、適合させようとすると詳細な構造計算が必要となります。現行のメーカーであれば、設置した当時の構造部材のデーターを保管していますので比較的対応が容易ですが、そうでない独立系メーカーが対応しようとした場合、当時のデーターを持ち合わせていないため、それなりにコストがかかってしまいます
もちろん、計算の話だけでなく、釣合おもりが脱落しないような構造であることが求められますし、エレベーターの古さによっては、レールからのカゴ脱落防止策など「14耐震」以前の耐震基準への対応検討も必要になりますので、耐震基準対応については費用対効果を考慮して選択することになります。

耐震性対応のポイント

  • 最新基準では詳細な構造計算が必要で、独立系メーカーが対応する場合はコストがかかる。
  • 古さによって最新基準以前の検討も必要なので、費用対効果を考慮して対応する。

【3】その他の考慮機能や工事

建築基準法により義務づけられているものではありませんが、リニューアル時に付加する機能として多く採用されているものに「マルチビームセンサー」があります

ドア部にセンサーを設置することにより、ドア部を遮る障害物(手、足、買い物袋等)があるとその間は扉が閉まらないため、お年寄りや車椅子を利用している方などが安心して乗り降りすることができます。金額的にもリーズナブルな価格で対応可能です。

また、同様の目的のちょっとした改善として、かご内(エレベーター本体内)の手摺りや鏡の設置などもあります。

その他、昨今の新築マンションやオフィスビルではよく見かける防犯カメラの設置、照明器具を明るくする(天井部分の交換)、見た目をきれいにする内装・外装シートの交換(三方枠部分やかご室内外のシートの貼り替え)なども、オプションで対応可能な場合がほとんどだと思います。必要に応じてご検討いただくと良いと思います。

【4】工事期間中の対応 〜エレベーターが使えない時どうする?

工事期間中、エレベーターが使用できなくなる期間の住民対応は、あらかじめ検討しておく必要があります

エレベーターを全く使えない期間が生じる場合もある!

複数のエレベーターがあり、マンションも開放廊下型の場合は、順番に工事を進めていけば工事期間中であっても原則として1台のエレベーターは使用可能です。今回の事例でも、2台のエレベーターを順番に行うことで、工期はその分15日×2=30日となったものの、全く使えない状態がなく進めることが出来ました。

しかし、エレベーターが1台の場合や、複数であっても階段室型等のマンションの場合は、工事期間中はエレベーターが全く使用できなくなりますので、そのような時の居住者対策も検討しておく必要があります。

過去の案件では、「工事期間中は旅行に行ってしまおう」とか「ホテルに行こう」という方もいらっしゃいましたが、マンションそれぞれの階数や戸数、区分所有者の状況等々の事情がありますので、費用対効果の面も考えると「この方法が絶対!」というものはありません。

公平な対応策と徹底した周知を!

過去に実施した対応の一つとして「階段昇降補助(いわゆる「剛力さん」)」というものがあります。
管理組合が補助作業員と契約し、居住者の①階段昇降の補助、②買い物荷物等の運搬、③ゴミ出し支援等を行うものです。
契約人数、対応可能範囲等によって金額も異なりますので、どこまでをやっていただくかをあらかじめ決めておき、居住者に周知するなどしてみんなが公平に利用できる体制をとる必要があります

階段昇降ケア対策Q&A

また、Q&A集などを作って居住者に配布するとよいと思います。

大規模修繕工事や給排水管更新工事でも、工事内容やマンションの状況によってはイレギュラーなケース(不公平感が発生するケース)が発生します。特定階や特定の人達にのみメリットが(多く)生じる工事や、既に特定世帯では対応してしまっているようなケースです。
エレベーターリニューアルも、前述の階段昇降補助であれば、高層階の人や高齢の方、体の不自由な方、また、頻繁に昇降する機会がある方や小さいお子さんがいるご家庭、妊婦さん等ほどその恩恵を享受できるものですし、マンションによっては、1階居住者にはほとんどメリットはない(使用しない)設備ですので、その必要性や工事期間中の対応・騒音問題等も含め、様々なことに注意を払いながら、居住者全員に理解してもらえるように努める必要があります。

製品・メーカーによっては、完全停止期間ゼロで工事が可能

なお、三菱製エレベーターの一部(1990〜1997年頃製造された該当製品)や日立製エレベーターの一部(1986年以降に製造された該当製品)では、完全停止期間ゼロ(工事期間中、全くエレベーターを使えない日が生じない)で対応可能とのことです。

いかがだったでしょうか。
マンションの高経年化に伴い、これからはエレベーターのリニューアル工事が多くなって くると思いますので、みなさま方のご参考になれば幸いです。

もっとよく理解したい人のための「エレベーター基礎知識」②

前回「1.運行速度」「2.ロープ式と油圧式」に続き、今回の内容に関連した「3.エレベーターの安全性」「4.エレベーターの耐震性」「5.エレベーターの保守(メンテナンス)」について、ご紹介いたします。

3.エレベーターの安全性

落下や天井への衝突防止対策

昔の映画などでは制御不能となったエレベーターが急速に落下したり上昇したりして、私たち観客もハラハラ・ドキドキさせられましたが、それは映画の世界だけの話です。
実際は、電気的にはリミットスイッチが床と天井付近に複数設置されており、危険ゾーンをかごが通過してリミットスイッチが反応すると、電気的にブレーキがかかる仕組みになっています。また機械的には、かごとロープで繋がっている調速機(ガバナマシン)があり、かごが異常な速度で運行すると調速機の回転速度があがり、最後はかごに設置された「クサビ」が作動してエレベーターを強制的に停止させるようになっています。

停電対策

<停電時自動着床装置>
エレベーターの電源が停止(停電)した場合は、本体に設置されているバッテリーが作動し、最寄りの階に自動的に停止して扉が開放されますのでその間に降りる(避難)ことができます。その後、扉が閉まりかご内の照明も消えますが、電気が復旧すると自動的に運転を再開します。

地震対策

<地震時管制運転装置>
地震感知器が震度5弱以上の地震を感知すると、最寄り階に停止して扉を開放しますのでその間に避難することができます。
この場合は地震が収まっても自動復旧することはありませんので、専門の保安員がマンションに到着し、安全を確認してから復旧作業を実施します。ただし、最近は大きな地震でなければ監視センターから遠隔操作で復旧できる場合もあるようです。

なお、地震による揺れや地震感知器の設置場所などの関係から、「震度〇」でエレベーターが停止すると断定できませんが、概ね震度5弱程度で最寄り階に停止します。

<P波センサー>
一般的な地震感知器はS波(主要動)を感知して作動しますが、地震の初期微動(P波)を感知して地震時管制運転装置に移行させるセンサーです。地震の初期微動で作動しますので、閉じ込め事故がさらに少なくなります。

戸開走行保護装置

前述の竹芝での事故は、扉が開いたままエレベーターが動き始め、三方枠上部とかご床に挟まれて死亡してしまうという考えられないものでした。
この事故の後に建築基準法が改正され、制御回路の故障などで、全ての扉が閉まる前にかごが動き始めた場合に緊急で停止させる装置の設置が義務化されました。

4.エレベーターの耐震性

エレベーターの耐震基準は、現在は建築基準法等で規定されていますが、1971年以前は各メーカーの自主的な基準で製造されていました。
1972年に社団法人日本エレベーター協会が「昇降機防災対策標準」を制定し、①かごや釣合おもりレールから外れない対策、②巻上機や制御盤の転倒防止対策、③地震が発生した時の運行方法、などの基準を公表しました。これがエレベーターの公的な耐震基準の始まりとされています。その後、宮城沖地震、阪神淡路大地震、東日本大地震などを経て少しずつ変わっています。

81耐震

1981年に、財団法人日本建築センターが1972年の基準を更に具体的に規定した「エレベーター耐震設計・施工指針」を公表しました。その年の下二けたをとって「81耐震」と呼んでいます(以下同じ)。

98耐震

1998年に、財団法人日本建築設備・昇降機センターが「昇降機耐震設計・施工指針」を公表し、81耐震に加え、更に①おもりブロックの脱落防止、②懸垂機器の転倒防止、などについて基準を設けました。

09耐震

2009年に建築基準法施行令が改正され、テーマが、それまでの「製品の破損防止」から「人命最優先の確認・安全走行」へと変わっていきました。具体的には、①予備電源設置の義務化、②地震時管制運転装置の義務化、③戸開走行保護装置の義務化、④ガイドレール・レールブラケットの強化、⑤長尺物振れ止め対策強化、などです。

14耐震

東日本大震災のときに、エレベーターの釣合おもりの脱落が多数みられたことを受け、2014に改正された最新の耐震基準です。具体的には、釣合おもりが地震で脱落しないよう本体の構造と構造計算方式を定めました。また、地震に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算方法も規定されました。

5.エレベーターの保守(メンテナンス)

フルメンテナンス(FM)契約

意匠部品、その他かご、扉、巻上機一式等を除き、部品の交換も契約金額に含めて定期的にメンテナンスする契約方法です。

部品交換も含まれるため、後述の「POG契約」より割高となります。
交換の範囲はエレベーターを通常使用する場合において発生する摩耗・劣化に限るとされており、交換の基準はエレベーター会社の判断で行われます。

費用は、エレベーターのタイプやメーカー系か独立系か、また、契約内容により様々ですが、概ね4万円〜8万円程度だと思います。

POG契約

「Parts(パーツ)」「Oil(オイル)」「Grease(グリース)」の頭文字をとって「POG契約」といいます。一部の消耗部品の交換とオイル・グリースの補充は保守契約費に含むがそれ以外の部品交換は全て有償となる契約方法です。

費用は、こちらも様々ですが、概ね2万円〜4万円程度だと思います。

フルメンテナンス契約とPOG契約、どちらが良いのか?

マンション管理組合にとっては、どちらの契約が得かという議論はありますが、マンションの事情に応じて選択することになります。

「フルメンテナンス(FM)契約」の場合は、契約金額は割高になりますが、予算を立てやすく、長期修繕計画書に記載する修繕項目としては、かご内のリフォーム費やリニューアル工事費を一定の時期に計上しておけば済みます。
逆にPOG契約の場合は、契約金額は安くて済みますが、保守業者から部品交換の提案や見積もりを受けたときに、その妥当性などの判断ができず修理が先送りになったり、ロープ交換など思わぬ時に高額の費用を請求されたりすることもあります。

また、過去の事例では、POG契約のデメリットを解消したいので、途中からフルメンテナンス契約に変更しようという管理組合がありましたが、変更時に受託業者からかなり高額の初期整備費用を請求されることが判り、結局は断念したこともありました。

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エレベーターのリニューアル(交換・改修)1〜交換時期や方法、工期、費用について

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2018年08月17日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

こんにちは。重松マンション管理士事務所所長の重松です。

近年のマンションにおいてエレベーターはなくてはならない設備の一つですが、メンテナンス(保守点検)も含めてコストがかかる設備の一つでもあります。
また、例外なくエレベーターにも耐用年数があり、メンテナンスのみで永久に使い続けることは出来ないため、いずれリニューアル(交換・改修)工事が必要な設備でもあります。築年が経過したマンションが増える中、築30年前後のマンションでは、まさに検討中のところもあるのではないでしょうか。

そこで、今回から二度に分けて、実際に当事務所が関わったエレベーターリニューアル(交換・改修)工事を基に、工事の進め方やポイントなどをご紹介いたします。エレベーターのリニューアルというと、大がかりでちょっと難しいと思っていたり、あまりコストダウン出来ないと思っている方も多いかもしれませんが、進め方や状況によっては、限られた予算で効率良く使用期間を延ばしたり、工事費用を抑えることも可能です。

エレベーターリニューアル(交換・改修)のきっかけは?

エレベーターのリニューアルに際し、まずその必要性が気になるところだと思いますが、きっかけは、概ね以下の4パターンに当てはまるのではないかと思います。

管理組合のエレベーターリニューアルのきっかけ

  1. 長期修繕計画に基づいて
  2. 生産中止や部品供給終了に伴って
  3. 経年劣化(トラブル・不調)に伴って
  4. 最新の安全基準適合や省エネ効果など

エレベーターのリニューアル時期はいつ?耐用年数は?

そもそもエレベーターの耐用年数はどのくらいかご存知でしょうか?
国税庁の減価償却基準(法定償却耐用年数)では「17年」とされており、メーカーは概ね「20〜25年」と公表しています。

また、国土交通省の長期修繕計画に関するガイドラインでは、15年目に補修、30年目に取替え(リニューアル)が記載されています
私が拝見するマンションの長期修繕計画では、25年〜30年目に更新が計上されている計画をよく見ます。きちんと長期修繕計画が整備されたマンションにおいては、このパターンが最も多いのではないかと思います。

エレベーターの耐用年数・交換時期

  • 国税庁の減価償却基準(法定償却耐用年数):17年
  • メーカー公表の耐用年数:20〜25年
  • 国交省長期修繕計画に関するガイドライン:30年目に取替え(リニューアル)
  • 実際の長期修繕計画:25年〜30年目に計画されているケースが多い

※重松マンション管理士事務所で実際に確認したものに基づく

生産中止や部品供給終了が引き金になるケース

次のパターンは、メーカーによる生産中止やその後の関連部品の保存期間満了に伴い、「まだ何とか動いているが、この際リニューアルしよう」というケースです。この場合、想定外のため、長期修繕計画よりも早めのリニューアルになることが多い印象です。

なお、この場合、通常ならメーカーからその旨を伝える連絡が、何らかの形で届きます。
もし心当たりがないようでしたら、一度メーカーに問い合わせしてみることをオススメいたします

経年劣化(トラブル・不調)に伴うリニューアル

また、経年劣化によるトラブルが頻発してリニューアルに踏み切るパターンも見られます

当事務所においてはこのような事例はありませんが、耐用年数に達しない状況の場合は、言わば不測の事態で資金面で難しいマンションもあると思います。また、長期修繕計画に記載がない場合も同様ですので、もし長期修繕計画に記載がない状態でしたら、もしくは、その確認が取れていないマンションなら、エレベーターの耐用年数と共に、一度長期修繕計画をきちんと見直すことをオススメいたします

最新の安全基準適合や機能性、省エネ効果などを狙って(利便性や資産価値向上を考慮)

最近のエレベーターは性能が良く、どこのメーカーも、省エネ効果があることや、安全性に関する最新の法規に適合することが出来るというメリットを謳っており、中には営業マンが来るケースもあるようです。

当事務所においては、これが主目的となるリニューアル事例はありませんが、生産中止等の理由からリニューアルに至ったマンションにおいて、前述のようなメリットが、早めのリニューアルに拍車をかけているようにも感じています。

リニューアル工事の費用は?

気になるエレベーターリニューアルの費用ですが、当事務所が関わるマンションにおいては、リニューアルの内容に関係なく、1基当たり1,200万円〜1,500万円で計画しているマンションが多いようです。次回でご紹介する事例では、一基あたりの見積もりが800万〜1,200万でした。小規模なマンションでは特に、計画的に資金を積み立てておかないと厳しい金額ですね。

エレベーターリニューアルの費用(予算)

1,200万円〜1,500万円/1基で計画しているところが多い

※重松マンション管理士事務所の関係するマンションに基づく

リニューアルするお金なんてない!どうする!?

リニューアルというと前述のような費用がかかりますし、とても大がかりなイメージもあるため、やりたいけどお金がない・・・というところもあるかもしれません。

しかし、実際にはいろいろな方法があり(後述「リニューアル工事の進め方・種類」参照)、重要度の高い部分だけ実施することで、費用を抑えることが可能です。また、次回ご紹介いたしますが、競争原理を働かせることで、結構なコストダウンも見込めます

リニューアル工事の進め方・種類

一口にエレベーターのリニューアルと言っても、幾つかの選択肢があります。
大きく分けると「フルリニューアル」と「部分的リニューアル」の2通り、そして、細分化すると「①全撤去リニューアル」「②準撤去リニューアル」「③制御リニューアル」という3つの方法が一般的です。
分類にもいろいろな考え方があると思いますが、私なりに管理組合目線でまとめると以下のような感じになります。

リニューアル工事の進め方・種類

  1. フルリニューアル:既存のエレベーターを、全て交換して新しくする方法
    ※一般的に「①全撤去リニューアル」と呼ばれるやり方が該当します

  2. 部分的リニューアル:使えるものは継続使用しつつ、部分的に交換する方法
    ※一般的に「②準撤去リニューアル」「③制御リニューアル」と呼ばれるやり方が該当します
    ※上記②③に属さない、あるいは派生メニューのような形で、もっと限定的に、必要な部品のみ行うやり方もあります。この場合、段階的に必要な部品を交換していくというやり方が可能な場合もあります

①②③の違いは、大雑把に言うと「一度にどの部分をリニューアルするか」という「程度の違い」です。
エレベーターというと、真っ先に私たちが乗る部分(「かご室」などと呼ばれます)を思い浮かべるのではないかと思いますが、「かご室はリニューアルしない」という選択肢もあるのです。

①>②>③の順に大がかりな工事になり、時間もコストもかかりますが、それぞれの特徴やメリット・デメリット等を一覧表にしましたので、ご参考にしてください。なお、出来るだけ包括的にまとめたつもりですが、諸条件により変わる部分もありますので、目安として捉えていただければ幸いです。

 

フルリニューアル

部分的リニューアル

①全撤去リニューアル

②準撤去リニューアル

③制御リニューアル

概要

全て撤去し、最新のものに総交換

既設品のごく一部を残して交換

※建物に固定されている三方枠、敷居等

制御系の交換・機能追加が中心
三方枠やかご室等は継続利用

建築確認*1

必要

要確認
※必要な場合が多い

一般的に不要
※必要な場合もある

工期

製作:約120日
工事:約25〜40日

製作:約120日
工事:約15〜25日

製作:約90日
工事:約3〜15日

エレベーターが使用できない期間


(25〜40日程度)


(15〜25日程度)


(3〜15日前後)

コスト

メリット

  • 最新の法規に対応可能
  • 大手メーカーへの切替可能
    (例:三菱→日立)
  • 最新の法規に対応可能
  • 工事中の振動・騒音が少ない
  • 既存の三方枠と敷居を継続利用するため、工期短縮が可能
  • コストが安い
  • 既存の三方枠や敷居、かご室などは継続利用するため工期が短い
  • 必要に応じた機能を追加できる

デメリット

  • 工期が長くE/Vが使えない期間が長い
  • 工事期間中の振動・騒音が大きい
  • 工期が長くE/Vが使えない期間が長い
  • 既存の三方枠と敷居を継続利用するため、他メーカーの参入が難しい(他メーカーへの切替は要全撤去)
  • 交換しない部分について、別途検討・計画が必要
  • 最新の法規全てに対応できない場合がある(対応しきれない場合は「既存不適格」のままになる)
  • 交換しない部分について、別途検討・計画が必要

注意点

  • 既存の昇降路を利用するので、従来の積載荷重や定員を確保できない場合がある
  • 既存の昇降路を利用するので、従来の積載荷重や定員を確保できない場合がある

 

*1:「建築確認」とは、建築基準法に基づき、建築物などの建築計画が建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを着工前に審査する行政行為(Wikipedia

用語解説(三方枠/敷居)

油圧式エレベーターのリニューアル・制御リニューアルについて

ロープ式?油圧式? エレベーターの種類に注意!

エレベーターには、巻上モーターの回転速度を制御してかごを昇降させる「ロープ式」と、油圧ジャッキの圧力でかごを昇降させる「油圧式」の2種類があります(後述「2.ロープ式と油圧式」参照)。最近では、省エネや廃油処理その他機能上の問題から、新規の乗用エレベーターに油圧式を採用するメーカーはなくなりました(特殊仕様や重量運搬用など一部例外を除く)。

大手エレベーターメーカーで油圧式のエレベーターをリニューアルする場合は、「全撤去リニューアル」もしくは「準撤去リニューアル」が原則となります(メーカーによっては、油圧式からロープ式への部分的リニューアルは可能)。

油圧式エレベーターのリニューアルとなった場合、前表のように工事期間が長くなり、エレベーターが使えない期間も長くなります。1基しかない、逆に複数台あり改修費用捻出が困難、旧機器の撤去等で振動騒音が心配などと、頭を悩ます管理組合様が今後増えることも考えられます。

油圧式制御リニューアルとは

しかし、一部の独立系メーカーでは、油圧式エレベーターを、油圧式のままリニューアルする工法も開発しています。
「油圧式制御リニューアル」とも呼ばれていますが、主に制御盤、電動機、バルブ、ポンプなどの主要機器を更新し、その他は再利用する工法です。大手エレベーターメーカーからの部品供給停止はこれら主要機器のみが対象であり、その他の油圧ジャッキやかご本体までは経年対象ではないことから、工期や費用面で採用される管理組合様も増えているようです。

構造や電動機の容量などは変わらないため、スピードアップや省エネその他機能面の向上は期待できませんが、限られた予算かつ短工期でより長く延命させる手法としては検討する価値がありそうです。

ちなみに、ご利用のメーカーや機種によって、油圧式制御リニューアルが出来ない場合もあるようですので、見積取得の際には現場調査を依頼されることをオススメいたします

次回は、実際に「③制御リニューアル」を行った事例と、エレベーターリニューアル(交換)検討時に知っておくと良いポイントをご紹介いたします。

もっとよく理解したい人のための「エレベーター基礎知識」①

管理組合主導でエレベーターリニューアルを実施するなら、ある程度の知識は必要です。
そこで、今回から2回に分けて、エレベーターのリニューアルを行う上でよく話題になる、検討が必要になる部分を中心に、幾つかご紹介していきます。
次回は「3.エレベーターの安全性」「4.エレベーターの耐震性」「5.エレベーターの保守(メンテナンス)」について、ご紹介いたします。

1.運行速度

エレベーターの運行速度は結構話題となりますが、「m/分」で表記します。
一般的なマンションでは45m〜105m/分位でしょうか。定員も6〜11名程度です。マンションの階高を3mで計算すると10階建てのマンションなら1階から10階までを15秒から40秒程度で上がっていきます。
超高層マンションになるとこの速度が格段に速くなり、180m/分、積載量1,150〜1,300㎏、定員17〜20名前後が一般的な設計になるようです。

ところで、エレベーターの運行速度については日本の三大メーカー(日立、三菱、東芝)が凌ぎを削っており上昇速度では中国上海のビルに設置された三菱製のエレベーターが世界最速(1,230m/分)、下降速度では横浜のランドマークタワーに設置されたエレベーター(三菱製)が世界最速(750m/分)といわれています。

ちなみに、上昇時と下降時とで速度が異なっているのは、技術的な側面ではなく乗客の恐怖心からと言われています。
現在、日立製作所が中国広州のビルに設置する予定のエレベーターの上昇速度は1,260m/分でこれが近々世界最速となる予定です。時速にすると75.6㎞、富士山の頂上まで3分で到着する計算ですね。

2.ロープ式と油圧式

エレベーターにはロープ式と油圧式の2種類があります。

ロープ式は、人が乗るかごと釣合おもりがワイヤーロープで「つるべ式」に繋がっており、巻上モーターの回転速度を制御してかごを昇降させる方式です。
以前は、巻上モーターを設置する機械室を屋上に建築する必要があったので、建築基準法の高さ制限や斜線規制の影響を受けるため後述する油圧式が採用されることもありましたが、巻上モーターをエレベーターピットの最下部等に設置することが可能な「ルームレス」タイプの登場によりその問題が解消したので、最近では圧倒的にロープ式が多くなりました。

油圧式は、その名のとおり作動油を使用し油圧ジャッキの圧力でかごを昇降させる方式です。
油圧式の場合、下降時にはシリンダから油を抜くだけなので、圧力がかかるのは上昇時だけとなります。油圧配管さえ繋がっていれば、機械室を屋上に設置する必要がなく自由に配置することが可能です。そのため建築基準法の規制を気にせずに設計できるので、マンションでは分譲戸数の確保などにもメリットがあり、割と多く採用されてきました。
しかし、油圧ジャッキを使用しているため速度が遅いことや、設置階数にも限界があること、さらにロープ式と比較するとモーター出力が大きいことや、冬場には油の温度を上げる必要があるため消費電力はかなり多くなり、最近の「省エネ」には向いていない等のデメリットがあります。

そのような理由で、特殊仕様や重量運搬用の油圧式エレベーターを除き、新規に製造している大手メーカーはありません。

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