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ホーム > お知らせ&日記(ブログ) > マンション管理士 業務日誌 > マンションでの防災活動のすゝめ【風水害への対応編】

2022年09月21日  [ カテゴリ:マンション管理士 業務日誌 ]

202208bousai01.jpgみなさまこんにちは。重松マンション管理士事務所スタッフでマンション管理士・防災士の飯田です。

マンションにおける防災活動の取り組みを、実際の管理組合での取り組み事例をふまえてご紹介するシリーズ。
前回の「地震への対応編」に続き、今回は「風水害への対応編」をお届けします。

昨今増加している風水害は、より身近で現実的な問題となってきています。
令和2年8月28日施行の宅地建物取引業法施行規則の一部改正では、不動産取引時に、水防法に基づき作成された各種水害ハザードマップを用いた説明をすることが義務化されました。
それ以前にマンションを購入された方の中には、風水害の可能性を全く考慮していなかった方もいると思いますが、そうした状況もふまえてご紹介していきます。

マンションでの防災活動のすゝめ
風水害への対応編

1.マンションでも、風水害に注意が必要

災害は地震だけではありません。
地球温暖化など気候変動に伴い、近年大規模な風水害が頻発していることはご存知のとおりです。

2019年台風19号の際、武蔵小杉のタワーマンションで浸水により停電が発生し、長期間生活に支障をきたすたいへんな被害がありました。
堅固な建物マンションで、風水害の被害が起きるとは考えにくいかもしれませんが、マンションであっても弱みはあるのです。

こうした風水害にしっかり対応できているマンションはまだ少ないのが実情ですが、実際に取り組みしているマンションの実例をもとに現実的な対応についてご紹介します。

冠水状態のタワーマンション1階周辺
(出典:「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」国土交通省/経済産業省)

2.マンションでの水害対策のキホン

戸建住宅と異なり、高層のマンションでは「在宅避難」が原則です。
とは言え、低層(1〜2階)や地階に住戸があるマンションは、浸水の影響を受ける場合があります。

そのようなときには、上の階へ避難(垂直避難)することになります。
風水害の被害が迫っている中での外部への避難は、危険を伴いますが、それがない分、マンションでは安心感があります。

ただし、マンションでも周囲を河川に囲まれる場合や、海抜ゼロメートルの低地、がけの前に立地する場合など、周囲からの浸水によって、長期間孤立状態になることがあります。

それに備えるためには、食料や飲料水など十分な備蓄が必要です。
また、マンションでも、状況によってはマンション外の安全な場所へ避難(水平避難)することもありえるため、あらかじめ、マンション周辺のハザードマップで浸水想定を確認しておくことが重要です。(参考リンク:国土交通省ハザードマップポータルサイト

例:東京都江東区の各種ハザードマップ
(出典:「水害ハザードマップ(3種類)」東京都江東区)

マンションで「在宅避難」が原則ということは、地震の場合と同様に飲料水、食料などの備蓄(兵糧)が不可欠であることは言うまでもありません。
ただ、居住者自身(特に高層階居住者)にその意識が低いことも事実です。

防災組織ではこうした各住戸への啓発活動も併せて行います。

タイムライン作成のすゝめ

「タイムライン」とは時系列に、その都度何をすればよいかを記載したものを言います。

一般的な水害のタイムラインとマンションでのタイムラインは少し異なります。
一般的なタイムラインは戸建て住宅などから浸水被害で逃げ遅れないようにするため、安全な場所への避難の準備と行動を表したものです。

これに対して堅牢で高層の建物のマンションでのタイムラインは、安全な場所、すなわちマンション内の居住する住戸(在宅避難)を原則とするため、風水害の危険度の高まりに合わせて「在宅避難」のために準備することを記載します。

また、マンションでタイムライン作成の際は、地震時の対応と同様に「自助」と「共助」に分けて整理すると、それぞれの役割分担も明確になり有効です。

実際に作成したタイムライン検討書(左)とワークショップの様子(右)

3.マンションで風水害時に想定されること

【イラスト】風水害時に想定されること河川の氾濫によるマンション内への浸水や、下水道から逆流する内水氾濫による浸水が引き金となって、建物内への浸水、受水槽の冠水、電気設備への浸水による停電などが発生します。

これらに伴い、エレベーターの停止、ポンプ停止による断水、セキュリティドアの開閉停止などマンションのインフラ機能のマヒが想定されます。
加えて、機械式駐車場があれば出し入れができなくなるだけでなく、地下ピットがある場合には浸水による水没の被害も想定されます。

そのほか強風や突風による被害として、隣住戸との隔て板、駐輪場・ゴミ置場屋根などの損傷・飛散、強風や飛来物によるによる窓ガラスの損傷、植栽の倒木などが想定されます。

雨、風ともに、災害時には日常では想像できないほどの被害が発生する可能性があることを意識していきましょう。

4.マンションにおける現実的な対応

マンションでどこまで浸水から守るかを想定した「水防ライン」を設定します。
そのために、マンション敷地内でどこに浸水の危険があるかを把握します。

複数の開口部がある場合や、敷地が広い場合など、完璧な「水防ライン」を設けることが現実的でない場合があります。
そのような時は、被災による影響と費用対効果を検討したうえで、浸水防止の優先順位を決めて対応するのが現実的です。
この場合、停電によるインフラマヒを防ぐために、電気設備を最優先に守っていくことをお奨めします。

電気設備への浸水を防ぐための止水板設置例
建物開口部からの浸水を防ぐための止水板設置例

浸水対策には、土のう、水のうはじめ止水板などいくつかの方式があります【表1・表2参照】。
止水板の中でも、工事が必要なものから工事不要の脱着タイプまで様々な種類がありますが、浸水被害から守る箇所により、止水性能(止水等級)を検討します。

また、止水等級には6段階あり、電気設備のようにわずかの浸水でも停電になる可能性がある場合には、止水性能のよい(止水等級の高い)止水設備が必要となります。

【表1】土のう、水のうと止水板の機能比較
土のう・水のう 止水板
メリット
  • 工事が必要なく設置できる

【イラスト】土のう

  • 比較的容易に設置できる
  • 設置の際の人手は比較的少ない
  • 土のうなどより、止水性能に優る
  • 何度でも再使用が可能
デメリット
  • 設置に時間と手間を要する
  • 止水性能に劣る
    ※実際の性能は止水等級1以下
  • 隙間から漏水がある
  • 浸水で流される危険性がある
  • 平常時の保管場所が必要
  • 準備(設置)に費用がかかる
  • 設置工事が必要な場合がある

【表2】浸水防止用設備の例
(出典:「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」国土交通省/経済産業省)

脱着型の浸水防止用設備の例
写真 【写真】土嚢 【写真】脱着式(単一構造)の浸水防止用設備 【写真】脱着式(連続構造)の浸水防止用設備 【写真】シート式の浸水防止用設備
種類 土嚢式 脱着式
単一構造
脱着式
連続構造
シート式
操作方法 手動 手動 手動 手動
用途 一般的に使用 玄関・コンビニの自動扉 地下出入口・建物外構 シャッター・建具
留意点
  • 設置するのに時間と手間がかかる。
  • セットの仕方で性能が確保されない。
  • 保管場所が必要。
  • ガラスサッシ部分について、水圧や漂流物による影響に留意が必要。
  • セットの仕方で性能が確保されない。
  • 保管場所が必要。
  • 使用材質により耐久性に差が出る。
  • 保管場所が必要。
特徴
  • 脱着式には、多種多様な製品があり代表的なものを掲載。
  • 通常は、別の場所に収納されているため、非常時使用できるよう講習が必要。
  • JISA4716で浸水防止性能が規定されていますので、これに準拠して漏水量など等級比較が可能。
備考 非常時に使用する締付機構など年一回作動・破損劣化などの点検が必要。
開口部設置型の浸水防止用設備の例
写真 【写真】起伏式の浸水防止用設備 【写真】起伏式(浮力方式)の浸水防止用設備 【写真】スイング式の浸水防止用設備 【写真】スライディング式の浸水防止用設備 【写真】スイング式の浸水防止用設備
種類 起伏式 起伏式
(浮力方式)
スイング式 スライディング式 スイング式
操作方法 手動・電動 自動 手動 手動・電動 手動
用途 地下駐車場・建物外構、地下鉄出入口 地下駐車場・建物外構、地下鉄出入口 地下駐車場・建物外構 地下通路、地下街ビル出入口 地下通路・地下鉄、地下街ビル出入口
留意点
  • 床に埋設されるため、落ち葉やヘドロなど動作障害となる。
  • 定期的な清掃点検が必要。
  • 床に埋設されるため、落ち葉やヘドロなど動作障害となる。
  • 定期的な清掃点検が必要。
  • 側壁に収納され可動範囲が大きいので、開閉操作に注意が必要。
  • 側壁に収納され可動範囲が大きいので、開閉操作に注意が必要。
  • 側壁に収納され可動範囲が大きいので、開閉操作に注意が必要。
特徴
  • 通常は、建物の壁・床に収納、非常時にセット。
  • スイング式、スライディング式は、締付機構にて止水する構造です。(非常時使用できるよう講習が必要。)
  • 建具型では、JISA4716で浸水防止性能が規定され、これに準拠して漏水量0.2㎥/h・㎡以下で6等級に区分、比較が可能。
備考 非常時に使用する締付機構など年一回作動・破損劣化などの点検が必要。

バルコニーからの溢水、浸水にも要注意

【イラスト】室内に浸水した様子マンションのバルコニーから、雨水が溢れて住戸に浸水することも想定されます。
バルコニーの排水口は、泥が詰まると排水に影響することがあります。排水口を定期的に洗浄していれば防げますが、実際にはなかなかできていないことがあります。
万一それができていなくても、風水害が迫る前の時点で、居住者にバルコニー排水口の詰まりの除去を呼びかけるなど周知することも重要です。

1 ハード面での対応

2019年の台風19号で、武蔵小杉のタワーマンションでは、下水道の逆流によりマンション周辺で内水氾濫が発生しました。

エントランスなどの開口部は土のう設置などにより浸水を防げましたが、冠水した雨水が雨水桝から地下4階の貯留槽に流入。
貯留槽が溢れ、その上階にあった電気設備が冠水し、停電が発生する事故がありました。

【イラスト】ロック付マンホールこれを防ぐためには、地表冠水時の貯留槽への雨水流入止水バルブを設置するなど、立地やマンションごとの設備に合わせた対応が必要です。

他にも、配管周りからの浸水防止や貯水槽からの溢水対策としてロック付きマンホール設置など、ハード面での浸水対策が重要です。
ハード面については、管理会社の設備担当と十分にすり合わせのうえで対応することをお奨めします。

2 助成金の活用

止水板設置などのために、行政によっては助成金制度があります【表3参照】。
こうした制度を活用して止水対策を進めることは重要です。
年度や自治体によって設置にあたっての条件が異なりますので、最新の情報をご確認ください。

【表3】東京都の止水板設置工事助成金例
(出典:各自治体Webサイト/2022年9月時点)
板橋区 止水板設置工事などに要した費用の2分の1以内/上限50万円
北区
  1. 止水板設置工事の2分の1の額
  2. 一つの建物につき上限50万円
  3. 一つの建物につき1回まで
品川区
  1. 個人:工事費の4分の3/上限100万円
  2. 法人:工事費の2分の1/上限100万円
杉並区 防水板設置工事などに要した費用の2分の1/上限50万円
狛江市
  1. 止水板の購入および設置工事 :実支出額の2分の1/上限20万円
  2. 関連工事:実支出額の2分の1/上限20万円
調布市
  1. 止水板の購入及び設置工事:実支出額の2分の1/上限20万円
  2. 排水ポンプの購入:実支出額の2分の1/上限5万円
  3. 可搬式非常用発電機の購入:実支出額の2分の1/上限10万円
  4. 上記のほか、市長が必要と認めた設備の購入及び設置工事:実支出額の2分の1/上限20万円
三鷹市 止水板設置工事などに要した費用の2分の1/上限50万円

東京都以外の補助金制度については、以下をご参照ください。(2022年9月時点)
なお、いずれも現時点で把握できたものに限ってのものですので、補助金制度の有無やその内容については、お住まいの地域でご確認ください。

3 災害時対応マニュアルへの追記

風水害対策のタイムラインや対応が決まったら、地震を中心に検討してきた災害時対応マニュアルに追加しましょう。

また、台風のように、数日前から進路を予測しながら、対応を準備できる場合だけとは限りません。
線状降水帯やゲリラ豪雨、竜巻など突然発生する風水害もあります。
止水対策を準備する時間がない場合や、切迫した状況などの場合の対応も想定し、マニュアルに追記しておくことをお奨めします。

4 風水害災害対応訓練

地震に備えた防災訓練については地震編でお伝えしましたが、風水害においても訓練は欠かせません。

止水板の設置工事ができていたとしても、その組み立て方法がわからなければ、浸水を防ぐことはできません。

決して難しいものではありませんが、普段そうそう使うものではなく、組み立て方法がわからなかったり、組み立てのための工具がどこにあるかわからないことがあります。
また、災害が迫る中、短時間での協力者の招集方法など、実際に体験してみないとわからないことがさまざま出てくるはずです。

居住者の身の回りでもバルコニーの排水口の詰まり除去など対応するべきことが見えてくるでしょう。
私たちは、風水害に備えて、平常時から訓練しておくことが大切です。

居住者による止水板組み立て体験の実例

さいごに

日頃から災害を想定し、準備しているか・いないかで、災害時のマンションでの生活継続に大きな違いが出てきます。
自然災害は避けられなくても、被災時の生活の不便を軽減することはできます。
マンションで防災活動をまだ始めていなかったとしても、その重要性に気づいた今からでも遅くはありません。
この特集をきっかけにマンションでの防災活動に取り組んでいただければ幸いです。

◇著者プロフィール

飯田勝啓
マンション管理士、防災士
災害時のマンションの被災状況を調査するとともに、首都直下地震や風水害への管理組合での対応を啓発するなど、マンションにおける防災活動に取り組んでいる。

マンション管理士であり防災士でもある飯田さんの協力により、2回にわたり防災に関する取組みを紹介させていただきましたがいかがだったでしょうか?
飯田さんは、熊本地震の際にもいち早く現地に赴き被害状況の調査などもされているので、防災に関するいろいろな提案やコメントは説得力があったのではないでしょうか。

また、マンションでは「在宅避難」が原則であることもご理解いただけたのではないかと思います。
かつての行政主導の防災訓練は、マンションの住民が集まって指定された近所の避難場所や避難所に歩いていくものでした。
現在では考えられませんが、当時は避難場所や食料の配給などが話題となる事が多かったと記憶しています。

近年では、度重なる大規模自然災害や新型コロナウイルスの影響で避難所のキャパシティ問題が浮き彫りになったこともあってか、マンションに限らず戸建住宅でも「在宅避難」が推奨されているようです。

防災活動は「いつから始めたらよいのか?」

マンションの防災活動はいつから始めたらよいのかというご質問をよくいただきますが、私は「できることなら今すぐにでも始めてください」と申し上げています。

大規模自然災害は、いつ発生するか分かりませんが、必ずやってきます。
しかし、日ごろから取り組んでおかないと、いざその時になかなか思うような対応はできません。

東日本大震災の時、全児童が無事だった岩手県の釜石小学校では、震災の3年前から津波を想定した下校時避難訓練をしていたそうです。
訓練の度に変わるサイレンが鳴った場所から、一番最適と思える場所に子どもたちが自分で考えて避難するという、実に実践的な訓練だというから驚きです。
https://www.kyobun.co.jp/close-up/cu20210302/

最初は、行政や管理会社から提供される防災関連の資料を参考にしながらでも良いと思います。
ご自身のマンションにあった防災マニュアルを、自分たちで考えながら作っていくことをお勧めします。(重松)

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