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こんにちは。重松マンション管理士事務所所長の重松です。
ここの所、日常業務対応が忙しかったので、ホームページの更新がなかなかできませんでした。
今回は、私が実施した区分所有法第59条の規定に基づく競売請求裁判2件のうち、1件は請求通りの判決、もう1件は請求が棄却された判決となった事例をご紹介いたします。
現在私が区分所有法第25条の管理者としてお手伝いしているマンションは4件ありますが、ほぼ同じ時期に2件のマンションで区分所有法第59条による競売を許可してもらうための訴訟を提起しました。
競売請求を裁判所に申し立てる理由は、2件とも長期に渡る管理費等の滞納です。
滞納が長期になってきた場合、直ちに59条競売を申し立てることは普通は行いません。手順を経て督促を強化し、それでも改善しない場合はまずは通常の訴訟を行います。
ちなみに私の場合は、申立後の手続が比較的簡単な「通常訴訟」を行い、支払督促や少額訴訟はあまり利用しません。
通常裁判を経て「判決(債務名義)」を得たうえで、これを基に「強制執行」を実施しますが、それでも回収できない場合に区分所有法第59条の競売に進む手続きを行います。
ご存知の方も多いと思いますが、本裁判を申し立てるには総会を開催し、区分所有者及び議決権のそれぞれ4分の3の賛成が必要となります(特別決議)。
また、相手方には「弁明する機会」も与えなければなりませんので緻密な手順で進める必要があります。
私はこの裁判を20回近く経験していますが、敗訴したのは今回が初めてです。しかも欠席裁判であるにもかかわらずです。
前述のように手順をつくし、「この方法をもってしか管理費等の回収は不可能である。」ということを、自分なりには主張・立証したつもりだったのですが、今回の裁判官はそうは理解しなかったみたいです。
判決文を整理すると概ね以下のようになります。
裁判所は、今回の請求が区分所有法第59条が認めるところの要件を満たしているかについて以下のような判断をしました。
これについては、裁判申立当時の管理費等の滞納額(具体的には60万円以上)を引用し、「管理費等が遅滞なく納付されることを前提とする管理組合の運営に支障を及ぼすものとして、区分所有者の共同の利益に反する行為に当たると評価する余地も十分にあり得る。」としています。
これについては、「この程度の滞納額が管理組合運営に及ぼす支障が著しいと直ちに判断することができる程度に達しているといい難い。」と述べています。
このマンションは戸数が400戸を超えているのですが、「60万円程度の滞納では直ちに影響はないでしょ。」といっているようです。
この部分については特に厳しい見方をされました。今回の被告については、59条競売を申し立てる前に通常訴訟を申し立て、判決を得たうえで家賃差押の強制執行を実施しています。賃借人がいるときはその家賃を差押えることができたのですが、ある時期に賃借人が退去したため差押える対象がなくなりました。
つまり、被告は区分所有者になって以来一度も管理費等を払うことはなく、管理組合は何回も訴訟を提起したうえで、家賃差押という手段でどうにかこうにか未収金を回収してきました。
そして、賃借人が退去してからは回収する手段がなくなったので今回の59条競売訴訟に踏み切ったものです。
これに関し裁判長は、「債務名義を得ているのだからそれに基づいて「強制競売」をやればよいではないか。1400万円の抵当権が設定されたのは平成17年なので、9年もたてばその債権額の全部またはほとんどが弁済により消滅している可能性が高い。」と一方的に判断しています。
理事会で協議した結果、地裁の裁判官の判断は、以下の通り到底納得のいくものではありませんでしたので、控訴することにしました。
また、控訴審の場合は裁判の内容も相当高度なものになると思われるので代理人として弁護士を起用して行うこととしました。
裁判長の判断のうち、納得できない部分は以下の2点通りです。
確かに400戸を超えるマンションにおいて60万円程度の滞納があったとしても、資金繰り等の面で見ると、管理運営ができなくなるということはありません。
しかし、マンション管理に携わった方ならだれでも理解できると思いますが、管理組合の資金繰りに直ちに影響を及ぼさないのであれば滞納に対して寛容であって良いということは全くありません。
管理費等の滞納については、滞納額の多寡、マンションの規模、管理組合の資金繰に与える影響に関係なく、それを回収するための管理組合の業務に大きな負担をもたらし、さらに区分所有者間の不公平を助長することを考えると、そのこと自体が大変な迷惑行為であり、「管理組合の運営に大きな支障を及ぼし、区分所有者の共同生活上の利益の障害が著しい」状態を作り出すといえると思います。
このことを控訴審でも強く訴えたいと思います。
この指摘に対しては、私も多少反省するべきところがあります。
59条競売の前に、債務名義に基づく普通の「強制競売」をやってみて、その結果「無剰余取消」の処分を経たうえで59条競売裁判を申し立てると認めてもらえたかもしれません。
事前に強制競売を実施しなかった理由は以下の通りです。
今回の裁判長は、その程度の理由でオーバーローンになっていると決めつけるのは無理があると判断したようですので、控訴審ではエクセルを利用して作成した住宅ローンの想定残高表と知人の不動産屋さんにお願いしてREINSで調査した同じマンションの相場を証拠として提出予定です。
この件については、いずれ控訴審での審議が始まりますので、経過や結果はあらためてお知らせしたいと思います。
マンション管理コンサルタント マンション管理士 重松 秀士(プロフィール| )
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