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みなさまこんにちは。重松マンション管理士事務所所長の重松です。
いきなりですが、もしも購入した新築マンションに施工不良や重大な欠陥が見つかったら、みなさまはどうされますか?
考えたくもないことだと思いますが、今回ご紹介する住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律、以下「品確法」)は、新築マンションにお住まいの方、今後新築マンションの購入をお考えの方などにとって、知っているかどうかで大きな差が出ることもある重要な法律です。
今回から2回に分け、当事務所が経験した「調停」事案も含めてご紹介していきます。是非ご参考にしていただければと思います。
この法律は、住宅生産者の責任を強化することにより、欠陥住宅の供給を防止し、住宅購入者の利益を守ることを立法趣旨として、2012年4月に施行されました。
そして、それを実現するために「1.瑕疵保証制度」「2.住宅性能表示制度」「3.裁判外紛争処理制度」の3つの要素から構成されています。
「瑕疵担保責任」とは、引き渡した住宅に欠陥(瑕疵)があった場合、その欠陥を補修したり、補修するための費用を負担したりする責任のことです。
そして「基本構造部分」とは、「1.構造耐力上主要な部分」と、「2.雨水の侵入を防止する部分」です(下図参照)。
「10年間の瑕疵担保責任(期間)」は、売主と買主の合意によっても短縮することはできない強行規定となっていますが、逆に双方の合意によって20年まで延長することは可能です。
この法律でいう新築住宅の定義は、「新たに建設された住宅で人が住んだことのない住宅(ただし、新築後1年以上経過したものを除く)」です。新築マンションであっても1年以上経過したものや、新築1年以内でも最初にマンションを取得した人から購入した場合には、品確法の瑕疵担保責任は適用されません。
しかし、最初にマンションを取得した人は、その人が他の人にマンションを売ったとしても、当初の住宅供給者に対して瑕疵担保責任を追及することはできます。
住宅の安全性を確保するために絶対的に必要不可欠な部分のことで、建築基準法施行令第1条に規定してある部分と同じ内容です。
マンションの場合、具体的には基礎、杭、壁、柱、梁、桁、屋根版等を言います。これらの部分は、土や内外装材で覆われてしまうことが多いため、欠陥を発見することが難しく、何年かして何らかの現象が起きないと見つからない部分がほとんどです。ですから、瑕疵担保期間を長期間定めています。
なお、地盤の軟弱性等については品確法の対象外となっています。
しかし、建設するときに適切な地盤の調査を行わず、不適切な杭や基礎の工事をして建物が不動沈下などを起こせば杭や基礎に瑕疵があると判断されることもあります。数年前に横浜で発生した「傾きマンション事件」は、杭の施工に問題があり不動沈下したもので、結局、売主がマンションを建て替える結果となったことは記憶に新しいでしょう。
住宅が構造上安全であることは必須ですが、生活するうえで雨水の被害を受けないことも快適な生活を営む上での絶対条件です。具体的には、屋根、外壁、開口部、雨水排水管等、瑕疵があれば室内に雨水が侵入してくる部分を対象としています。
なお、キーワードは「雨水」と「室内」ですので、上階のベランダの床にひび割れがあり、そこから雨水が下階のベランダに垂れて来ても、室内ではないので品確法の瑕疵対象外ですし、給水管に瑕疵があって、水道水が漏ったとしても品確法の瑕疵にはなりません。
性能表示の対象となっている項目は10項目で、それぞれに第三者機関がチェックした性能表示が「評価書」という形で明示されます。
なお、本制度は、品確法で規定された制度ではありますが、強制ではなく任意です。
性能表示の対象となる項目は国土交通省告示で明示されており、以下の10項目になります。
それぞれの項目は、共通ルールに基づいた等級や数値で表示されるため、専門知識がない素人でも、他のマンション等と比較したり、自分のマンションがどういうレベルにあるのかを客観的に知ることができます。
前述の性能表示の評価(審査)は、国土交通大臣から指定を受けた評価機関が行います。性能評価や性能評価書の交付を業として行う第三者機関です。大臣の指定を受けた評価機関ですので、第三者性はもちろん、一定数以上の評価員を有していることや、業務を行うための十分な適格性を備えていること等が条件になります。
評価は、設計段階と建設された段階の2回にわたり実施され、設計段階の性能評価は、設計仕様が性能評価の基準(日本住宅性能表示基準)を満たす設計となっているかを審査し、建設段階の性能評価は、当初の設計通りに施工されているかの審査となります。
なお、2段階ありますが、2段階共に審査を受ける必要はなく、それぞれ申請に基づき実施されるものなので、設計段階の性能評価のみというケースもあります。
このような手順を経て出来上がった性能評価書ですから、それなりの権威があります。
例えば、設計住宅性能評価書を契約書に添付した場合、交付された評価書の内容が契約内容になったと見做されます。また、取得した住宅が性能評価書の基準を満たしていなかったことが判明した場合は、住宅供給者だけでなく、指定審査機関も住宅取得者が被った損害を賠償する責任を負うこともこの制度の特徴です。
前述のとおり、この制度は任意ではありますが、住宅性能評価書の交付を受けた住宅は、一定の基準を満たした良質な住宅であることの証明となりますので、中古住宅として売買する際も、売り手にとっても有利、買い手にとっても安心感がある、ということが言えると思います。
ただし、「住宅性能評価書がある=あらゆる面で高性能な住宅」という訳ではありません。
各項目それぞれにランクがありますので、ある項目は最高ランクだけど、ある項目は最低ランク、ということもあります。「あらゆる面で高性能な住宅の証明」ではありませんので、その点には注意してください。
なお、一般社団法人住宅性能評価・表示協会の統計データによると、共同住宅等における現時点での交付実績(累積)は、設計住宅性能評価が約223万8千戸、建設住宅性能評価が約170万4千戸となっています。昨年は顕著な落ち込みがみられますが、近年はほぼコンスタントにそれぞれ10万戸前後の交付数で推移しています。
また、国交省の統計データによれば、竣工ベースのマンションの供給戸数は近年10万戸前後です。各データの内訳を把握できていないのでハッキリとは申し上げられませんが、近年の新築マンションの多くは設計住宅性能評価書がある状態ではないでしょうか。
品確法制定以前の欠陥住宅紛争では、専門性の高さが要求されたり、補修方法や補修費用を巡る供給側と取得側の意見の隔たりが大きかったりして、裁判をしても時間と費用が掛かる割にはいつまでも解決しない状況となることが多かったようです。そうした背景から生まれた制度のためか、申請費用も1万円と廉価です。
ただし、この制度の対象となる住宅は、「建設住宅性能評価書」が交付されている住宅のみとなり、当事者は当該住宅の購入者(相続人を含む)、建設業者、販売業者となります。
その名のとおり、(欠陥)住宅紛争を解決するための機関で、「建設住宅性能評価書」が交付されている住宅がこの機関を活用できます。「住宅紛争審査会」と呼ばれるこの機関は、後述の3種類の方法によって、裁判せずに迅速に住宅紛争を解決することを目指し、国土交通大臣が指定した各地の弁護士会が主体となって運営しています。
指定住宅紛争処理機関(住宅紛争審査会)を活用してできる紛争処理は、「1.あっせん」「2.調停」「3.仲裁」の3種類です。
いずれの場合も、弁護士が紛争処理委員となり、その裁量の下に進めていきます。建築の専門的な知識も必要となるため、建築士も委員として参加します。
また、国土交通省は、品確法第70条に基づき紛争処理の参考となる「住宅紛争処理技術関連資料(技術的基準)」を公表しています。この技術的基準が審議された国会の付帯決議には、速やかな紛争解決の参考にするべきことや住宅取得者の利益の保護に十分配慮して定めること等が記されています。
なお、3の「仲裁」には時効を中断する効力がありますが、1の「あっせん」と2の「調停」はそれがありません。
また、いずれの場合も、当事者同士の合意の上での各紛争処理となる点には注意が必要です。たとえ管理組合がこの制度の「仲裁」を利用したいと思っても、あるいは、住宅紛争審査会から解決案が示されても、相手が応じなければ、他の道を模索しなければなりません。
もちろん、この制度を利用することなく、最初から裁判を選択することも可能です。
新築時に売主からもらう書類の中に「アフターサービス基準」があります。マンションの共用部分等について、保証期間が定められています。
品確法は「法律」です。定められた期間内に対象部位について瑕疵があれば、住宅供給者が責任をもって補修したりその費用を負担したりしなければなりませんが、問題(紛争)となっている箇所が対象部位に該当するのか、また、竣工当初からの瑕疵に当たるのか等は明確でない部分も多く、意見が対立したりしています。
一方、アフターサービス基準は売主と買主間の「契約」です。
前述のような解釈の違いによって解決が長引くことを防止するため、契約期間内に予め決められた不具合等が発生した場合は、売主負担で補修するという内容です。
また、品確法の期間が一律10年なのに対し、アフターサービス基準は2年〜10年とかなりの幅があります。
押さえておいて欲しいポイントが多く、文字量が多くなってしまいましたが、ある程度ご理解いただけたでしょうか。
マンションを管理する管理組合は、普段から共用部分を点検し、修繕等の対応をしています。
しかし、隠れた瑕疵を発見することは極めて難しく、多くの場合は、外壁に総足場を架けて実施する第1回目の大規模修繕工事のときに今まで気付かなかった不具合が発見されます。ところが、1回目の大規模修繕工事を実施するのは築10年以降で、品確法や民法の債務不履行責任が問えなくなっているのです(※1)。
そのような理由から、前回の「施工不良、剥落事故...マンションの外壁タイル問題について」でも書かせていただいたことですが、お客様には引渡し後10年を迎える前に外壁と屋上防水の点検を行うことをオススメしています。
点検項目は、外装がタイルの場合はタイルの割れ・浮き・剥離等で、塗装の場合は躯体のヒビ割れ・爆裂(※2)等です。総足場を架けることはできませんので、屋上からブランコを吊るして主要なゾーンを数箇所チェックします。もしその時点でタイルの大量の浮きや剥離が発見されたり、外壁のひび割れ等が多かった場合は、売主に補修を求めたり、見解を求めたりする必要がありますし、きちんとした売主であれば誠意を持って対応してくれます。
タイルの剥離や浮きはアフターサービス基準で2年〜5年と定められている場合がほとんどですが、前述のとおり雨水の侵入を防止する部分に該当する考え方もありますので指摘するべきと思います。
マンションの躯体・タイル・防水の不具合に関しては、普段から注意するとともに、10年の節目を迎える際にはもう一度総点検をして、マンションの適正な保全に努められますようお願いいたします。
続き:事例:住宅紛争審査会での調停〜裁判まで<マンションに欠陥が見つかったら②>
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<参考文献>よく分かる住宅の品確法
マンション管理コンサルタント マンション管理士 重松 秀士(プロフィール| )
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